EXその1 二人の日常
EX1 女神ちゃんの日常
始まりの街、実は結構住みやすい町と言われている。
商業施設の充実さや、気楽に立ち寄れる酒場とか…案外衣食住に困らない。
低価格で5フェアからほとんどスタートだから、金欠ユーザーは訪れやすいとか。
観光スポット的には海、マスコットはサメッティとカップルとか…。
来なくてもいいけど、やってくる場所として有名なのよ。
500層の中で、ビギナーは薄れてるけど初心に戻りたいユーザーは基本戻って住み着くみたいなのがよくある。
私は、始まりの街で支援とか何気なく居るから人気NPCとして有名だった。
果てしない勧誘やフレ申請、それを全部断ってるのよ。
―――私は"氷華"以外は興味がないの。
普通NPCはコケにされやすい、雑用扱いばかりなのに彼だけは違ってた。
肯定も否定もしない、ただ…そばに居るだけでいい。
くさいセリフだけど、本当だと思うのよ。
今日は久しぶりに1人で始まりの街に散歩しに来たんだけど…流行がちょっとおかしいのよ。
タッコっていう3層マスコットが、今日来てる
見た目はタコそのまんまだけど、足かな?2本だけムキムキなんだけどなにあれ。
き、キモかわいい…って旗に書いてるわ。
それにチラシに…"タコ焼き"っていう食べ物が乱雑なイラストで書かれてる。
同士食いしてるのかしら…?
いや、むしろ…未生物と遭遇レベル。
原料はタコ…だよね? 触手がうねうね。
な、なんか悲鳴まで聞こえる…。
「いやだ! 僕をタコ焼きにしないで!」
「タコ焼きってタコを焼くから」
「ああああああああぁぁぁ!!」
タコって喋るんだ…
しかも、店主の女の子平然としてるけど!?
「サメッティ」
「サメッティ?!」
「さめさめさめ」
「なんとなくだけど、助けて?」
「サメ!」
「その前にサメッティ、なんで筋肉質な脚が生えてるの?」
「さ、さめ!? さめぇ!!」
あ、なんか泣きながら逃げていった…
すごい速さで海に戻って行ったわ。
変なの、海にしかいないのに。
でも、タコを焼くって3層にあったかしら?
んんー、考えるのはやっぱり無理!
とりあえず、食べられるのかしらね?
「いらっしゃい」
「あの、タコ焼きください」
「はいよー」
「三層の特産品ってサッカナじゃないの?」
「…勘がいい客は知らない方がいい世界があるよ」
クーラーボックスからタコが一匹…
なんか困っているようだ。
「喋るタコ、食材にしたらかなりおかしい。でも、絶品…なのよ!」
「ゴクリ…」
思わず生唾を飲んでしまった…
聞いてるとなんか美味そうだなぁって。
「僕はタコだけど、イッカは何故選ばれないの?」
「知らん」
「え、そんな顔しないで…店主さん」
「イカはねスルメにされるんだよ? わかるかい? 酢に漬けられるよりまだいいわよ」
「焼かれるより断然良いタコぉ!!」
なるほど、この二人…?
いや、1匹と人のやり取りが目を引いてるのね。
お客さん増えてるけど、毎回あの叫び声を聞くのって…正直どうなんだろうね…?
「お客さん、とりあえずさっき作ったたこ焼き食べて」
手渡されたたこ焼き…皿一枚にまんまだった。 え、これ…野生児が食べるやつじゃないの?
「外見に囚われちゃったら終わり。 ほら、かじってみて」
「はむっ!?」
な、中がサクフワなこのとろける生地…!
風味豊かな出汁の味…!
な、なにこれぇ…! 美味すぎる!
「もぐもぐ…ごくり。おかわり欲しい!」
「はいよ。たこ焼きだけど、タコは外見で中身はたい焼きみたいな感じよ」
「たいやき?」
「知らないの? タイヤ焼き」
「あれ? ちょっと名前が…タイヤ?」
「そっか、知らなくても無理ないわね」
何故だろうね…
地味にダジャレぽく感じるの。
まぁ、こんな美味いの久々だよ。
料理担当はローテーションだけど…
ティムの料理なんて…個性的な味だもん。
焼き魚みたいな何かとか
味噌汁みたいなゲルとか
大体は食べられるか分からない料理を作ってるのよ。
時に、触手が出てきて吊るされたり…
こんな時に限って氷華は、いっつもどことなく細い眼差しで堪能してる。
ゲスかクズか両立する所で助けるのよ。
…時に私が人だったら、氷華の反応どうなんだろうねってたまに思う。
変態になるのかな?
ヤンデレになるのかな?
それとも…結婚しちゃうのかしら!?
そしてゆくゆくは―――
まだ早いのよ女神ちゃん!!
そうなったら私、もう自滅しちゃうよ!!
「お客さん、顔歪んでますよ」
「へ? そうかしら?」
「うわぁ…鼻血流してる」
「これは、乙女の思想よ」
「想像力豊かな子…。まぁ、好きな人を思えばそうなるのかしらね?」
「なります!なりました!」
「素直でよろしい、恋バナ私に聞かせてよ――――」
こうして私は、恋バナを店主と話に咲かせた。
お礼に沢山の食べ物を貰った。
非常食にしようかな…ううん、氷華に分けようかな。
自分だけ独り占めはなんかもったいないもん
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