第6話ふわもふNPCギルドへ

それからというもの……



女神ちゃんの表情がずっと一定だった。




話しかけても、素っ気ない感じだな。




「女神ちゃん?」

「んー?」




…今度は表情が戻った女神ちゃん。

俺達の心配をよそに笑みを浮かべていた。




何が何だかさっぱりだなぁ……。




「大丈夫?」

「…大丈夫だよ」

「本当にか?」

「やだなぁ。“今までと変わらないよ”」




いや、明らかにさっきまで違ってただろ。

はぁ…まぁ考えても無駄かな。




俺たちは森を抜けて、

気が付けば夕暮れ時にギルドに着いた。




「見通しがいいな、ここ…」

「街が見えるんだよ?」

「街の灯りが星みたいだな」

「例えがロマンチックだね」

「うっせーな。ティムは違うのか?」

「見慣れてるからね」

「なんも感じないのか」




まぁ、それは仕方がないか。

しかし、もふもふギルドか…。




今宵、誘われた俺は…

疲れを癒す獣ギルドに満たされよう。




看板が肉球スタンプだらけだ…。

猫をモチーフにしたギルド。




黒猫と白猫の二匹が描かれてる。




猫好きなら迷わず入るぐらい

――猫の主張が強い!




「獣って最高だな…」

「氷華、悟り顔がキモイ」

「解せぬ…なぜ分からぬのだ!?」

「私は、サメッティがいいもん」

「女神ちゃん、動物は最高だぜ?」

「同類の顔で見ないでよ」

「手厳しいなぁ」



にしても――NPCなのに家族があるのか。




これだけでも驚きだけど――

人間と勘違いする仕草が多いな。




「あら? ティムの好きな人?」

「ち、違う…くもない」

「あらあら、逃げなくてもいいのに」




作り込まれ過ぎてて…

ん? …彼氏だと?! 空耳か、なんだ。




“た、たすけてくれ!”




不意に流れたビジョン――。




な、なんだ今の…死んでたよな…。

一瞬だけど、NPCが誰かに殺されてた。




「あの、領地さま?」

「へ?! な、何か?」




あまりの衝撃に俺の声が飛んだ。




「クスクス…声が裏返ってますよ」




ティムのお母さん若い…!

これアレだ…

恋愛エピソードにされない不具合系の枠だ。




攻略対象にされない…。

これは悲劇だと思う…。




なんか俺、どっかで同じこと言ったか。




「ティムから話は聞きました。資源の話についてです」

「お魚を納品しましたよ」

「あら、今確認しました。助かりましたわ」




ティムのお母さん…

優しい笑み…尊い…!




俺はティムに足を踏まれた。

浮かれてたが…解せぬ!




「お母さん、ギルドに入れたら?」

「ティム、それ何を意味してるか分かる? 縄張りに異性を入れる意味…」




ティムのお母さん…

凄く嬉しそうな顔してるな。




ティムはめちゃくちゃ否定してるけど。




俺は女神ちゃんに視線を向けた。

――顔に表情がない、目が笑ってない。




ずっと黙りだと思ってたけど、

…疲れたのかな。




「それに、女神ちゃんいるからそんな感じにならない…?」




ティムがモジモジしながら俺を見てる。

疑問形に聞かれてもなぁ…。




「はず、だよ…ね?」

「俺に聞くなよ」

「そ、そうだよね…」




ティムに期待はずれみたいな顔されたけど。

え、落ち込んでる…。




ティムのお母さんはクスクスと笑った。




「君もティムも、恋愛は不器用だね」

「い、言い返せる言葉ないぞ…」

「ティム、おてんば娘だから仕方ないと思ってくださいね」

「は、はい」

「じゃあ、どうぞギルドへ」

「お邪魔します」




ギルド内は猫のぬいぐるみがたくさん置かれてる。





――女の子の香りがする。




「お、男!?」

「にゃっ!?」

「私達…襲われるんだ…!」

「ティム」

「なに?」

「…周りの反応が変な方向になってない?」

「そりゃあ、色々と…ね」

「知ってるのか?」

「口では言えないのよ」




…挙動がおかしいNPC一人いる。

俺を見てロボットみたいな動きしてる…?




さっきから視線が外れてないな。




―――てか、男子いないよな?




「ティム」

「なに?」

「男性いたらどうなるんだ?」




場の空気が凍りついた。

あ、これ聞いちゃまずいやつか。




「氷華、ドスケベなの?」

「はぁ?!」

「雄がいないのは、異常に変態だから」

「異常に変態?!」

「男は獣って意味通りなのよ」

「色々ぶっ壊れてやがる…」

「前は違ってたよ」



「あとね、雄が雌の縄張りに入るのは結婚の意味…だよ」




「あー、ふーん。なるほど」




ん? 結婚だと!?

俺、ティムと出会ってまだ半日!




お互いをまだ知らないよ!!




「ティムの次世代が楽しみだわ」

「ちょっとお母さん!?」




そんな最中で…

ティムはある視線を感じ取る。




「ねぇ、氷華…女神ちゃん怖い」

「まばたきしてないな…」




女神ちゃん俺を…じーって見てるんだけど。

まるで観察されてる感じだ。




今、まばたきしたけど…

ズレてる…ラグか? 一秒ぐらい。




「大丈夫だぞ…」

「別の意味で…だよ」

「え」

「鈍すぎるよ…」




まぁ――NPC攻略って奥深さを感じた。




嫌な感じは消えない…

まるでこの先で何かを思い出すみたいな感じだ。




近々行く予定の地下ダンジョン…

何故か、物凄く嫌なんだ…。




でも、女神ちゃんに必要って言われた。




もう、行くしかねぇだろ…?




地下ダンジョンに……さ。




その前に、依頼の資源回収してからだな。

…覚悟決めとかなきゃな。それまでに…な。

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