第5話楽しさと不穏で
海沿いを三人で優雅に歩く――。
スローライフっぽくていいなぁ。
それに、青い空に潮風と白い砂浜……。
ちょっとした入り江みたいな感じで、見渡す限り横穴を掘ったような岩ぐらいか。
目の前にはぼやけてるけど灯台がある。
海水は…ちょっと冷たいな。
まだ夏は遠いと、俺は感じ取った。
「この貝殻…綺麗!」
「私も欲しい」
「一緒に探そう!」
「うん!」
…他のNPC達も楽しんでるな。
流石、観光スポットなだけあるな。
「ん?」
足元が光っている…
何かと思い拾うとビーチグラスだった。
集めとこうかな……
アクセサリー素材みたいだしな。
「資源回収!」
「ほえ?」
「私はこの海を改革するのです!」
「女神ちゃん、もう遊びモードだよ?」
「こ、これは違うのよ!!」
資源回収いや……素材集めなんだけどな。
俺はウィンドウを開く、しばし悩めるように顎に手を添えた。
領土を保有すると住人の私生活に問題が出てくる。めんどくさいなぁ…正直な。
まだかぐわしい何かじゃないからいい。
畑肥料関連だと、確定だからさ。
納品のは☆5の魚って書いてるな…
んー、俺は戦闘スキル特化型みたいだからどうしたらいいやら。
システムログ
女神ちゃんはサメッティと戯れた。
ピチピチなさめはだを手に入れた。
ティムはサメッティを捕獲した。
☆6レアのお魚を手に入れた。
報酬、釣竿とふわもふ団員書
ま、またサメッティ…?
そういや、この街のマスコットだよな。
地域応援隊の魅惑のサメッティ……
そんな告知がウィンドウ内にあるんだよ。
「サメッティは私の守護神!」
「ただのサメだよ?」
「違うもん!」
……俺は右手でフリックして、ウィンドウを閉じた。
砂浜で城を作りながら言う会話かよ、それ。
…街の人口って少なかったっけ?
もう少しいた気もしたが……まぁいい。
「ふわもふの本を回収するよ」
「解せぬ…なにゆえか答えよ」
「氷華が変態になるから」
どうゆう意味だろうか? いやらしい本ではないと俺は認識してる。
獣耳の写真集みたいな雑誌であり、女神ちゃんは目を細めて手の平を伸ばしている。
「余計気になりますなぁ。健全男子はこんな本ぐらいで変態にはならぬ!」
俺は大事そうに脇に挟めようとした……が、背筋が凍りついた。俺は振り返る。
女神ちゃんの視線が怖い……!
明らかに羽虫をぶちのめす顔だ。
「わ、わかった……」
「分かればいいのよ。分かれば」
「これがあれば、通過できるわね」
「通過証か?!」
「うん、なんだと思ってたの?」
「いや、別に……」
女神ちゃんはどうやら、無くされると困るから怒っていたらしい。
NPCにも、感性があるんだな……。
それにしても、めちゃくちゃ勘違いしてる俺が恥ずかしいんだけどな。
「ふわもふギルドに行くぞー」
……って言っても聞こえてないか。
女神ちゃん達は遊びに夢中だなぁ。
砂浜から森に向かって俺は歩き出した。
遅れて女神ちゃん達も走って来る。
こうして――ふわもふギルドに向かっ……
ているとでも思ったか……?
寄り道は沢山あった。
だが、どうしても背景の絵面が同じ過ぎた。
険しい道のり、蒸し暑くて流れる汗。
海に居た方が何倍もマシな気がする。
おかげで足が棒のようになり靴底が痛い。
ある意味、俺は悲しくてしょうがなかった。
だって、既に片道…2時間は歩いてる。
まだ着かない。まだ中間地点とティムは言う。
日が傾くのも時間の問題だった。
…そのぐらい密林の道のりが長い。
ちょっとした滝が近くにあった、ちょっと歩きマイナスイオンを身体に浴びる。
疲れたし休むか……いい感じの岩あるな。
でかい岩の上に座り、靴を投げ捨てた。
川に足を突っ込んだ俺は、冷たさにびっくりした。
あー気持ちいい……。
空気が美味い……。
蒸し暑さがなければ最高だな。
川のせせらぎ、鳥の鳴き声が響き渡り……木霊している。
のんびり過ごすのも悪くないよな。
まぁ、ちょっとした休憩ポイントだけどな。
ティムは持参してた焼いた魚を食べていた。
そういや、なんも食べてなかったな。
んー、お腹は減ってないな。
流石に歩き疲れたからか……。
軽く背伸びした俺は…生あくびした。
「眠そうだね」
「かなーりな」
「やすらぎの空間だからね」
ティムは、俺の傍まで来て座った。
俺はじーっと、ティムの手を見た。
…ティムって肉球あるのか?
「なぁ、ティム」
「ん?」
「肉球触らせて」
「だ、ダメ!」
「なんで? 今癒やされたいんだよ」
「変な感じになるから…メッ!」
俺は頭から雷を打たれた衝撃を受けた。
――脳筋だった過去に知らせたい気分だ!
女神ちゃんは、ゆっくり起き上がり背伸びした。……そういや隣に寝かせてたな。
寝起きの顔で俺をじーっと眺めてる。
「起きたか、女神ちゃん?」
「ぐっすり寝てたね」
「―――」
「ん?」
「どうしたの?」
女神ちゃんを見た俺は――
一瞬だけ時間が止まった感じがした。
無音な空気が一瞬だけ流れた。
女神ちゃんの瞳…赤いような…。
いや、別人の誰かに見えた。
俺は驚きと何故という言葉だけが脳内を駆けていた。
女神ちゃんが瞬きすると、いつもの青い瞳になった。
気のせいなのか、分からないけど……深く聞きたくないな。それを俺が拒んでるように。
「いや、なんでもない」
女神ちゃんは視線を逸らした。
まるで、ヒロインが照れ隠してるようだった。
「…直視しないで」
「へ?!」
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