第2話 昼に焦かまれる。

昼に焦がれるりな

チャイムが鳴ると、クラスの空気が一気に弾ける。

笑い声、スマホの通知音、机を引く音。

りなは、いつものようにノートを閉じ、教科書を丁寧にそろえた。


周りの子たちは、部活だの、放課後のカフェだの、SNSの話題で盛り上がっている。

その輪に混ざることもできる。

でも、いつも少しだけタイミングがずれる。

笑うタイミングも、相づちを打つタイミングも。


(なんか、置いていかれてる感じがするんだよね。)


窓の外を見る。

陽射しが強い。

空が、痛いほど青い。


りなは目を細めて、それから視線を落とした。

机の上のスマホの画面には、SNSのタイムラインが流れている。

「#今日の放課後」「#友達最高」

明るい言葉が並ぶ中で、自分の心だけが曇っていた。


---


 放課後。

帰り道の交差点。

信号が青に変わるのをぼんやりと見つめていると、向こう側に制服の違う男の子がいた。

白いシャツに、黒のリュック。

夜学の子だ、とすぐにわかった。

この時間に登校する子たちは、たまに見かける。


でも、その中で、彼だけは目を引いた。

どこか落ち着いていて、静かで、

まるで時間の流れが違うような感じがした。


(……なんか、変な人だな。)

りなは、なぜか目が離せなかった。



夜。

眠れずにスマホをいじっていると、ふとタイムラインに「#夜学」というタグが流れてきた。

その投稿の写真は、街灯の下に置かれたノート。

「夜にも、勉強してる人がいるんだな」って思った。


あのとき、頭に浮かんだのは――あの交差点の男の子。

白いシャツ、無表情、でも、どこか優しい空気。


りなはベッドの上で、スマホを胸に置いた。

天井を見つめながら、小さく呟く。


「……昼も夜も、どっちも息苦しいな。」


---


翌日、学校の帰り。

ふと、同じ交差点に差しかかる。

偶然なのか、また、あの男の子がいた。

信号が赤に変わる。

向こう側で、彼が少し顔を上げる。


目が合った。

その瞬間、りなの胸の奥で、 

何かがゆっくりと動き出した。




(つづく)

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