上野駅②
「そんなの出来ないよ」
「は?つまんないデブとか生きてる意味ないから」
嫌そうな顔をしながら気持ち悪い踊りをする廉をみてクラスのみんなが笑う。
「やっぱお前天才だよ面白いデブだよ、良かったなただのクソデブじゃなくて」
今度はみんなで隣町の公園に遊びに行った日の帰りの様子が映される。
「僕の鍵知らない?」
「知らねえよどっか落としたんじゃねえの、それか自分で食っちゃったか」
「本当に知らない?」
「知らねえって言ってんだろ、良いよ先帰ろうぜ」
「一緒に探してやろうよ」
幸助がみんなに向かって声をかける。
「はぁ」
「いいよ、みんな先帰ってて見つけたら帰るから、本当に大丈夫だから」
俺の表情を伺いながら廉が言う。
「ごめんな、俺たちも門限あるから、もし本当に見つからなかったら電話しろよ」
かずが落ち着いた口調で廉に言っているのを俺は黙ってみていた。
「うん、みんなありがとう」
俺たち4人は自転車に乗って家を目指してペダルを漕いだ。
「賢二本当に知らねえの?」
「まじで知らねえって」
それから20分ほど自転車を漕いでもう家はすぐそこと言うところで俺は口を開いた。
「あ、そう言えば草むらに鍵隠したんだったわ、まじで忘れてた」
「は?」
幸助がキレ気味にこっちを見る。
すぐに自転車の向きを変えて来た道を戻ろうとしたのをみて制止するように俺は言った。
「いやまじで忘れてたんだって、でも大丈夫めっちゃわかりやすいとこだから、時間もやべえし帰ろうぜ、すれ違いになってもやだしよ」
「お前流石にそれはひでーよ」
将太まで俺を責める。
「大丈夫だってあいつも馬鹿じゃねえんだしすぐ見つけて帰ってくるから」
それから少しのやり取りがあったけど空がかなり暗くなっていたのもあって全員家に帰った。
「おいあの後鍵見つからなくて廉歩いて帰ったんだぞ」
次の日学校に来るなり、キレながら幸助が言ってくる
「まじ?あいつ馬鹿だなすぐ電話すりゃ良いのに」
そこに廉が教室に入って来て、俺は笑いながら言った。
「あ、ちょっと痩せたんじゃねえかデブ」
「お前良い加減にしろよ!」
「なんだよ、お前らだって結局帰ったじゃんかよ」
一瞬の沈黙の後に横で聞いてた将太が口を開く。
「今日一緒に探してくるよ俺」
その後も約1時間俺たちの過去の出来事がスクリーンに映し出された。
あまりにも長いもんだから途中寝てやろうかと思ったけれど、それをしたらきっと次に進めないだろうと思って耐えた。
「どうだった?」
かずに聞かれる。
どうも何も、別に何とも思わない。酷いことしてたなとは思うけれど、だからと言ってこれが罪と言われるのはどうかと思う。
「いや、俺が悪かったと思ったよ全部本当にごめんな」
とにかく謝罪をすればいいんだ。
俺は申し訳なさそうな顔をして、少しうつむきながら廉に謝った。
「許さないよ、廉は今も僕を馬鹿にして何で謝らなきゃいけないんだって思ってる」
そんなの当たり前だろ、何で俺がお前に謝らなきゃいけないんだよ。
「いやそんなことない、本気で悪かったと思ってる」
「あのな廉、この世界で嘘はつけないんだよ、心の中は全部筒抜けなんだ」
そんなの反則だろ、だとすれば俺は一生かな上野駅から出ることなんて出来ない。
出れたとしても、こんな内容の謝罪を繰り返していたらどこかで絶対に先に進めなくなるに決まってる。
「てかなんだよ、じゃあお前は100%俺を恨んで今まで一緒にいたのかよ」
「それは違うよ、廉のおかげで仲良くなれた人だっているし」
「ならいいじゃねえかよ、むしろ感謝してほしいね」
横にいたかずがため息を吐くのが見えた。
「あのな、お前の罪は本気でそれを思ってることなんだよ」
「どういうことだよ」
「お前俺たちの知らないところで廉から金借りたりして返してないだろ、しかもかなり昔から」
こいつ言いやがったのかよふざけやがって。
黙ってこっちを向く廉を睨みつけた。
「お前の罪はな、廉の気持ちを知っててそれを良いように使い続けたことだよ」
かずは淡々と言葉を続ける。
「いじめてただけの方がまだ良かったかもな、それならそのうち会わなくなれば、時間が解決してたかもしれない」
「よくわかんねえ、いじめてた事が罪なんじゃねえの」
「賢二は僕のこと友達だと思ってた?」
「当たり前だろ」
「そっか、僕はねいつか本当に友達になれたら良いなって思ってた、みんなの事も賢二のことも好きだったから」
「だから友達だって言ってんだろ」
「この世界に来て賢二の気持ちが見えるようになってもっと良くわかったよ、賢二の中で僕は友達予備軍で都合が良い時に使う程度に思ってたって」
言ってる意味が分からない、そのはずなのに俺がどこかでバレたくないと思っていた気持ちを見透かされている気がした。
確かに俺はこいつを友達予備軍くらいにしか思ってないかもしれない、だけどそれが本心ではないし、本当に廉のことを嫌いとかって気持ちは全くなかった。
そんなこともわかってくれないのかこいつらは。
「じゃあ何だよどうしたら許してくれるんだよ、金返せば良いのか?友達だよって口に出せば良いのか?」
俺はさっきから何を見せられて何を聞かされてるんだ。
こいつらの言ってることが分からないわけじゃない、でも本当に俺は廉のことが嫌いでいじめてた訳じゃないんだ。
悪いことをしてたとまで思わない、実際こいつは俺のおかげで出会った頃より明るくなって友達もたくさんできたのに。
俺のおかげでこいつはいまがあるはずなんだ。
「そうだよ、賢二のおかげだよ」
「心ん中入ってくんな勝手に思ってることみてんじゃねえ気持ち悪い」
「なあ、廉が心底優しいやつだってことお前もわかってるだろ、なんだかんだ俺たちのバランス取ってくれてたのもこいつだってわかってるだろ」
いつもはトラブルメーカーで何度も喧嘩の原因を作って来た将太が言う。
「廉がもし生きてた時、僕はこの関係を終わらせて友達になりたいと思ってるよ、僕が本当に賢二を恨んでてただ謝ってほしいなら、きっととうの昔に会うのをやめていたと思う」
「そんなこと言われてもな、、」
今さら普通に関わるなんて本当にできるのか、だって俺は今までこいつに嫌がらせをして来て、それ以外の関わり方がもうわからなくなってるってのに。
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