第24話 夜明けの突撃
黎明国の援軍が戦場に到着した瞬間、緊張で張り詰めていた空気がわずかに揺らいだ。
東の空はまだ暗い。しかし、地平の先に淡い光が差し始めている。
「お前たち……!」
蓮の顔に安堵と驚きが入り混じる。
先頭に立つのは、弓を背負った女性戦士ライラ。かつて帝国辺境で共に戦い、黎明国へと迎え入れた仲間だった。
彼女は鋭い眼差しで敵を射抜き、叫ぶ。
「蓮! ここからは私たちの番だ!」
◆ ◆ ◆
「ちっ……増援か」
黒炎の猛将バルザークが巨体を揺らし、忌々しげに唸る。
「だが、数が増えたところで我を倒せると思うな!」
再び戦斧が振り下ろされる。
大地が裂け、周囲に炎が吹き荒れる。
「皆、散開! 挟み撃ちにする!」
蓮が指示を飛ばし、援軍と共に布陣を組み直した。
リーナとライラが左右から切り込み、カイエンと援軍兵士たちが盾壁を張って攻撃を受け止める。
ノアとイリスは後方から魔法を重ね、ネフェリスが歌で全体を支える。
「連携……悪くない」
ミストが冷静に戦況を分析する。
「バルザークの注意を分散できれば、勝機はある」
◆ ◆ ◆
ライラが弓を引き絞り、炎を纏った矢を放つ。
矢は黒炎を貫き、バルザークの肩に突き刺さった。
「小癪な……!」
猛将が咆哮し、矢を引き抜く。
「今だ!」
リーナが踏み込み、剣を突き立てる。
黒鎧に深い傷が刻まれ、火花が散った。
その隙を狙って、蓮が無限アイテムボックスから取り出したのは“氷結の封印球”。
投げ放つと、蒼白い光が炸裂し、猛将の動きを束縛する氷鎖が広がった。
「ぐぬぬっ……!」
バルザークが足を止める。
「よし……!」
蓮は叫ぶ。
「一気に畳みかけろ!」
◆ ◆ ◆
援軍兵たちが雄叫びを上げ、突撃した。
夜明けの光が地平を染め、戦場に新たな色を与える。
矢と魔法の雨が黒炎を削り、剣と槍が次々と打ち込まれる。
ネフェリスの歌声が高まり、全員の力が倍増していった。
だが、それでもバルザークは倒れない。
氷鎖を引きちぎり、巨斧を振るって兵士たちを吹き飛ばす。
「まだだ! ここで止めなきゃ、国は守れない!」
蓮が再び前に躍り出る。
彼は無限アイテムボックスから、新たな武器を取り出した。
それは、星詠の神殿から授かった“光焔の双剣”。
「バルザーク……これで終わりだ!」
◆ ◆ ◆
双剣が交差し、光と炎が融合する。
蓮の全魔力が流し込まれ、刃は星のように輝いた。
リーナ、ライラ、カイエン、ノア、イリス――仲間たちが次々と力を重ねる。
全ての攻撃が一本の矛先となり、バルザークを狙った。
「ぬおおおおっ!」
猛将が最後の力で斧を振り抜く。
炎と衝撃がぶつかり合い、戦場全体が揺れた。
そして――光が爆ぜた。
夜明けの光に溶け込むように、バルザークの巨体が膝をつき、崩れ落ちた。
「……ば、かな……我が……ここまでとは……」
呻きを残し、黒炎の猛将は沈黙した。
◆ ◆ ◆
静寂が訪れる。
夜明けの太陽が昇り始め、空を黄金に染めていった。
「勝った……のか?」
兵士の一人が震える声でつぶやく。
リーナが剣を下ろし、蓮に笑いかけた。
「うん。これで、黎明国はひとまず守られたよ」
蓮は深く息を吐き、太陽を仰ぐ。
だがその瞳には、まだ消えぬ決意が宿っていた。
「帝国は……これで終わらない。必ず次の手を打ってくる。
だから俺たちも……歩みを止めちゃいけない」
仲間たちは頷き、共に昇る朝日を見つめた。
黎明国の戦いは、ここからさらに広がっていく――。
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