第20話 王都からの知らせ

 自分の部屋に戻った俺は、ベッドの上で横になった。こっちの世界での、初めてのキス……。不思議な事にレインとのキスは、嫌な感じはしなかった。寧ろ、安らぎすら感じた。多分、他の男だったら、嫌な思いしかしなかっただろうな。


 もしかすると、俺は……。


 レインに恋をしているのか?


 男のレインに……。兄のレインに……。


 いくら考えても、今は答えを出せそうにない。まあ、先はまだまだ長いんだ。焦らず、ゆっくりと考えていけばいいだろう。


 暫くベッドの上で休んだ後、朝食の準備を済ませ、レインと一緒に食事を摂った。食事をしている時、レインからキスの話題は一切出ない。レインにしてみれば、少し強引だったと感じて反省しているのかもな。


 俺は今、リリーナと一緒に教会にいる。教会には祈りを捧げる聖堂の他に、小さな部屋が設けられており、そちらが教室となっている。教室の教壇には、この教会の神父であり、生徒に学問を教える先生でもあるナムル・ゴドーが立っている。


「今日は、学問を教える前に、お知らせする事があります。今朝の事ですが、王都から緊急の知らせが届きました」


 王都から、緊急の知らせ? こんな辺境の村に、珍しいな。


「三日前に重犯罪者であるゼヒド・スクワローが、デガロ監獄島より脱獄したとの事です」


 ゼヒド・スクワローだって? 確か、その名前は……。


「既に知っている人もいるかもしれませんが、彼は元Sランク冒険者であり、豪炎の死神と呼ばれる残虐非道の数々を行った超危険人物です」


 そうだ。こいつは、たった一人で、とある村を炎で焼き払ったとレッドに聞いた事がある。


 そんな奴が、脱獄しただって!? 超やべーじゃん!


「ですから、帰りはなるべく誰かと一緒に帰るようにして下さい」


 マジかよ! ぜってー、そんな奴に出くわしたくねえ!

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