2、ギルド

「さてと、ワーウルフよ。早くかかってこい」

ラドゥはワーウルフに挑発する

『ガルゥ……』

対してワーウルフは、ラドゥが強者であることを本能で察しており、下手に仕掛けるとやられてしまうとわかっているため、ラドゥの出方を伺っている

「ふむ。かかって来ないのであれば、こちらから行くぞ!」

ラドゥは一歩踏み込み、瞬時にワーウルフの懐まで接近していた

「まずは一回」

ラドゥはワーウルフへ横に一閃、胸元を切り裂く

『グガァ!?』

ワーウルフは一閃を貰いながらも牙で噛み砕こうとするが…

「甘い!」

またも縦に一撃を貰ってしまう

『ガァ…』

ワーウルフは距離を取ったが、ラドゥはすでにワーウルフの背後へと回っていた

「脆いな、これで終いだ」

ラドゥはワーウルフが振り向く前に首を飛ばし、命を絶った

「三回か…もう少し耐えてほしかったな」

ラドゥは少し残念そうに呟いた

 

{すげぇ}

{変異種のワーウルフを簡単にやっちまった}

{ほんとに何者なの?}

{リーシェちゃんはどうなったの!?}

 

「凄い…あんな簡単に斬れちゃうんだ」

 

「おい、そこの女」

 

「はひっ!」

 

「ここは何階層目だ?」

 

「え? ここは五階層目ですけど…」

 

(もうそんなに登ってきていたのか)

「教えてくれて感謝する。ところで、さっきからそこで浮いている物体は何なんだ?」

 

「あ! これですか? これはダンジョン専用配信ドローンといって、私がダンジョンを探索したり、魔物と戦っているところを配信…つまり、他の人へ見せることができる物です!」

 

「なるほど、ところで配信とやらは今もされているのか?」

 

「配信されてますよ」

 

「そうか、とりあえずここから出たいのだが…どっちに行けば出られるのだ?」

 

「ちょっと待っててくださいね、今確認しますので…」

 

(配信…どこかで聞いた覚えがある。…そうだ、思い出した。我が吸血鬼となる前、まだこのような場所がなかった時に見ていた物だったな。長い間この場所で生活していたからすっかり忘れていた)

 

「確認できました! えっと…お名前をお聞きしても?」

 

「あぁ、まだ名乗ってなかったか。では改めて…」

「我の名はラドゥ、唯一無二の吸血鬼である」

 

{吸血鬼? 魔物のヴァンパイアじゃなくて?}

{ヴァンパイアってことなのかな? それにしては言葉を話してるし知能は高そうだけど}

{ラドゥって名前、聞いたことあるか? 調べても出てこないんだが…}

{聞いたこと無いな。吸血鬼って言ってたし、もしかしてダンジョンから生まれたんじゃね?}

 

「ラドゥさんですね! では案内するので付いてきてください!」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

 

そうしてラドゥはリーシェに案内してもらい、念願のダンジョンの外へと歩いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

【ダンジョン出入口】

 

「さ! ラドゥさん外に着きましたよ!」

 

「ほう? ここがダンジョンの外なのか…我は少し感動しているぞ」

 

「良かったです! では、配信を切ってくるので少し待っててくださいね!」

 

「了解した」

 

 

「はい! 少しトラブルもありましたが、コボルト30体討伐クリアです! 良ければチャンネル登録等よろしくお願いしますね! それではまた次の配信で会いましょう! まったね〜♪」

 

{ハラハラしたけど楽しかったよ!}

{無事で良かったよ、本当に}

{リーシェちゃん! お疲れ様!}

{次の配信も楽しみにしてるね!}

 

手を振りながらリーシェは配信を終了する

 

「ラドゥさん、お待たせしました…ってえぇ!?」

そこにはギルドの職員らしい人達に包囲されたラドゥさんがいました

 

「…まぁ妥当な判断と状況だな。ただ、未知なる存在に対して20人弱は些か少ないのではないか?」

 

「黙れ! 貴様は何者だ! そしてダンジョン外に何のようだ!」

 

「はぁ…普通、質問は一つずつだろうが…我はラドゥ、吸血鬼だ。ダンジョンの外には興味があったからだな」

 

「興味だと?」

 

「あぁ興味だ。質問には答えてやったぞ、さっさと散るがいい」

 

「そんな事で信用などできるかぁ! 総員! 攻撃用意!」

 

「ほう? やるのか…ならかかってこい!」

 

「ちょっと待ってください!!」

 

「ん?」 「む?」

 

「ラドゥさんは煽らないでください! ギルドの皆さんも武器を降ろしてください!」

 

「しかしリーシェさん! このラドゥと名乗った者は背中に蝙蝠の羽の様なものを生やしております。そう簡単に武器を下ろすのは危険では…」

 

「そうですよ! 得体の知れない者へ簡単に武器を下ろすわけにはいかないのです!」

 

「大丈夫です! 確かにラドゥさんは気性が荒いかもですが安全です! 現に変異種のワーウルフから私を助けてくれたんですから! 危険な存在ならそんなことせずに見捨てるか襲ってるはずですから!」

 

「そうですか…そこまで言うのでしたらわかりました。ひとまずは武器を下ろさせていただきます。皆さん、武器を下ろしてください」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし、そこのラドゥという者が不審な行動を取った際には然るべき対応をさせていただきますが、よろしいですね?」

 

「女よ、どうしたのだ?」

 

「どうしたもありません! 何で挑発しちゃうんですか! 普通に話せば良いじゃないですか!」

 

「だが先に仕掛けたのは向こうだ、我は戦闘などの勝負は受けて立つのが我が礼儀だ」

 

「魔物じゃ無いんですからそんな簡単に戦おうとしないでください! ラドゥさん結構強いんですから!」

 

「むぅ…仕方ない」

 

「……すまないリーシェ君。少し話を聞かせてくれないか?」

 

「…!? ギルド長!!」

 

「ん? 誰だ貴様…包囲してた奴等の反応を見るに…貴様がこいつらの長かなにかだな」

 

「ラドゥさん! この人はギルド長って言って、ギルドですっごく偉い人なんだよ! ギルド長! ラドゥさんは悪い事はしてません!」

 

「なに…そこまで警戒しなくてもいい、私は少し話を聞きたいだけだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁそうだ。リーシェ君、話してくれるか?」

 

 

〜リーシェ、説明中〜

 

「なるほど…それでラドゥ君、君は何をしたいのかな?」

 

「そうだな…ならばこいつと同じ探索者とやらになってみたいな。そして配信者とやらにも」

 

「そうか、なら色々と用意しなければいかんな。ついてきたまえ、我がギルドへ案内しよう」



_________


補足


五階層から地上に戻るまでの間にラドゥは探索者や配信者、ギルド等の説明を軽く聞いています。


ギルド長の年齢は32歳です。

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