血を必要としない吸血鬼、ダンジョンにて配信者と遭遇す
博壱/ハクワン
1、遭遇
"ダンジョン“
それは、今から約90年前に突如として地球に出現した未知なる存在。
ダンジョンの中には常に出現し続ける危険な『魔物』と呼ばれているモンスターがいたり、トラップなどが存在する。
しかし、そうした危険のあるダンジョンの中にはダンジョンでしか取れない素材や鉱物などがある。また、魔物の力の源となる魔石も存在する。
政府はそんな危険なダンジョンから生活する人々を助ける為にダンジョンに関する法や設備、施設などを作った。
そして、ダンジョンに入り、探索や攻略を目的とする者達を総じて【探索者】と呼ぶ。
ダンジョンが出現してから50年ぐらい経った頃、ダンジョン攻略や探索を配信する"ダンジョン配信“が流行し始めた。
当時はダンジョン用の配信機器などが無く、人が殺される場面だろうとなんだろうと配信されてしまっていたが、技術が進み、モザイク等の処置が自動で入るようになった。
そんなダンジョンで一人、出口を求めて探索を続けている者がいた。
「う〜む、俺は出口を探し初めていったいどれぐらいの時間を彷徨っているのだろうか…」
彼の名は"ラドゥ"。ダンジョンで誕生してから数百年は経過している吸血鬼だ。
見た目は眼の色は紺色で髪が全体的に白いが髪先が赤くなっている。髪型がリバースアップバングとなっている。また、体には蝙蝠の羽に似た形をした羽があり、背中と腰の二箇所に生えている。羽は全体的に朱くなっている。服装は赤みがかった黒色のタキシードを着ている。身長は193cm。腰には刃渡り94cmの刀を差している。
そんな彼は、ダンジョンで生まれてから魔物と戦いながら過ごしていたが、ダンジョンの外へ行ってみたいと願うようになった。そうして魔物達を刀や自身の血を使った攻撃だったりで倒していきながら出口を探し続けていた。
「もう少しここで過ごした後、一気に上まで駆け上がるか? でも上がる為の階段とかが見つからないから結局はこの階層で過ごすしかないのか、…はぁ」
(このダンジョンは後どれぐらいで一階層目に着くのだろうか。湧いてくる魔物も最初に比べて遥かに弱くなっているしな)
そう! 彼は生まれた所の階層から約三十階層以上は登ってきているのである!!
「きゃああ!!」
「ん? 今のは女の悲鳴か? …ここからだと少し離れているがまぁ助けに行けるな」
(それに、地上へ行く為の情報や交渉ができそうだ)
「さて、少し急ぐか!」バサァ
そうして、悲鳴が聞こえた方向へと羽を広げて飛んでいった
-----------
「…なんでこんな強いやつがここにいるの!?」
『ガァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛』
〜数時間前
「はい、視聴者の皆さんこんにちは、初見の人は初めまして! リーシェだよ〜」
{こんにちは!}
{待ってたよ! リーシェちゃん!}
{今日は何するの?}
{初見です!}
「今日はね、第五階層でコボルトをそうだなぁ…とりあえず30体倒すことを目標にします!」
{コボルトかぁ…すばしっこくて厄介}
{今日はどっちメインなの?}
{コボルトは群れで来るからね}
{そうそう、一体一体は弱いけど群れで来ると本当にしんどい}
{五階層ボスには挑まないの?}
「今日は始めは弓矢で数を減らしてから双剣で倒していきます! ボスは少し様子見ですね」
「では、早速行きましょう!」
~~~~~~~~~
「はぁ、はぁ、やっと30体目倒し終わりました」
{リーシェちゃんお疲れ様}
{お疲れ〜}
{思ったよりも出会わなかったね}
{ほんまそれ}
{いつもより少なく感じた気がする}
「何はともあれ、これで目標達成です!」
{この後はどうするの?}
「この後はボスを倒してテレポートできるようにしたいですね」
{…ねぇ、リーシェちゃん。そのダンジョン今ちょっとやばいかも}
{ん? どうしたんや?}
{なんだなんだ?}
「どうしたんですか? モンサさん」
{さっき別の配信見ててワーウルフが五階層で出たの。見てた配信者さんは他の探索者と一緒に避難してたけど…}
{ワーウルフ!? 五階層に!?}
{それま!?}
{やばいじゃん! 早く避難しないと!}
「あの! …ワーウルフってなんですか?」
{ワーウルフってのは、コボルトが変異した"変異種"って言って、コボルトの何倍も強い魔物だよ}
{十三階層にもいるけど、あっちは群れでいるから一体一体は脅威ってほどじゃない}
{でも変異種って群れない代わりに通常よりも少し強いんだよな…}
{まぁ、五階層で出てる時点で変異種ってことは確定だから危険なんだよな}
{まぁ要するに、とにかくやばいから早く避難して!}
「わかりました! それじゃあ早く避難します!」
{そうだな、そうした方がいい}
{安全第一で避難しよう! リーシェちゃん!}
{なるべく早く避難しような!}
{ワーウルフの位置情報とか出てるかもだから確認しながら避難した方がいいかも}
「はい!」
その瞬間、リーシェの後ろを何かが超スピードで通り過ぎていった
{!?!?}
{!?!?}
{何今の!?}
「はい? みなさんどうしたんですか?」
{ちょっとリーシェちゃん、リーシェちゃんから見て左側ちょっと見てくれない?}
「? 左側ですか? ……!? え!? コボルト!?」
{超高速でコボルトが飛んできた!?}
{なんで!?}
{さぁ? でもほんとになんでだろ?}
ザッザッザッ
「ん? 何かの足音がする?」
{足音?}
{何の足音?}
「はい、右側の奥から聞こえてきます」
{右側って確かコボルトが飛んできた方向じゃ?}
{確かに}
{…ん? あれは…}
「大きな影が見えます! 何でしょう?」
{!? リーシェちゃん! 今すぐ逃げて!}
{お? どうしたんだ?}
{どうしたんだよ、そんなに慌てて}
{あのシルエットはワーウルフなのよ!}
{は!? 嘘だろ!?}
{リーシェちゃん! コメントなんて見てないで早くそこから離れて!}
「わかりました!」
コメントの通り離れようとした時、ワーウルフの姿が見えなくなったことにリーシェが気づく
「? あ、あれ? ワーウルフは?」
{ワーウルフどこいった?}
{ほんまや、おらんやん}
{姿見えなくなったの普通に怖いのだけど…}
{でも姿が見えなくなった今のうちに逃げよう!}
「そっそうですね! 今のうちに…」
突如、リーシェの背後から殺気を感じ取り、咄嗟に距離を取る
武器(双剣)を構えながら
「…後少し反応が遅かったら食べられてたかも」
そこにはリーシェを喰らおうと噛みついてきたワーウルフの顔が目の前にあった
『グルルルルル…』
{ワーウルフ!? さっきまで向こうにいたのに!}
{回り込まれたってこと!?}
{これだと逃げれないじゃん!}
{リーシェちゃん!}
「これがワーウルフ…威圧感が凄いですね…」
「回り込まれたから逃げられない…だったら! 戦るしかない!」
(少なくともワーウルフの脚にダメージを与え続けて追ってこれないようにできたらまだ助かる希望はある!)
{リーシェちゃん…}
{リーシェちゃん! せめてワーウルフの脚を狙うんだ! そうすれば逃げれる希望はある!}
{そうだ! リーシェちゃんが諦めて無いんだ! 俺達だって諦めたら駄目だろ!}
{ワーウルフの攻撃方法は爪による斬撃と牙による噛みつき攻撃、そして蹴り攻撃だから気をつけて!}
「わかりました! ありがとうございます! …ふぅぅ」
(集中するんだ! 私! 目の前のワーウルフだけに集中するんだ!)
『グルル…ガァ!!』
ワーウルフが爪でリーシェの体を切り裂こうと近づく
『ガルァ!』
ワーウルフの爪がリーシェへと襲いかかるがリーシェは双剣の片方で受け止める
「くっ! …やぁ!」
リーシェはワーウルフの爪を払う
『!? ……ルガァ!!』
ワーウルフは爪を払われたことに驚いたが、すぐにもう片方の爪で切りかかる
「やぁ! そして…せいや!」
リーシェも切りかかってきた爪をまた弾き、ワーウルフへと斬りかかる
『ガゥ!?』
「まだまだぁ!」
リーシェはワーウルフが怯んだことでできた隙を狙ってさらに切りつける
{リーシェちゃん、頑張れ!}
{その調子だ!!}
{このまま脚に傷を与えれたら逃げれる!}
{リーシェちゃん! 負けるなぁ!}
『ガルラァ!』
よくもやったなと言わんばかりにリーシェへ蹴りを放つ
「ぐっ!…………ガハッ」
リーシェは咄嗟に蹴りを防御したが、ダンジョンの壁にぶつかってダメージをくらう
ここで冒頭へと戻る
「まだ…だ、もっとダメージを与えないと」
{リーシェちゃん…ワーウルフと戦りあえてるけど流石にやばそう}
{そりゃ、変異種のワーウルフだしなぁ…}
{リーシェちゃん、大丈夫かな}
{弱気になってちゃ頑張ってるリーシェちゃんに失礼だろ! 俺らにできるのはリーシェちゃんが生き残れるように願ってることなんだ!}
{俺達がリーシェちゃんにできることが応援しかないのが悔しい…}
「ふっ!」
リーシェが壁を蹴ってワーウルフへ接近する
『グルゥ…』
「はぁ!」
リーシェがまたワーウルフへ切りかかる
『ガァ!』
ワーウルフは両方の爪をリーシェの腹へ切りつける
ザシュ!
「きゃあ!」
ワーウルフの斬撃で腹を斬られたリーシェは咄嗟にワーウルフ蹴りを放ち、距離を取る
「ふぅ、ふぅ、大丈夫。まだ…やれる」
{あぁ…、リーシェちゃん!}
{早く誰か助けに来て! もう誰でもいいから!}
{救助隊は動いてないんか? 配信してるリーシェちゃんが危ないのは見てわかるはずだけど…}
{動いてるけどまだ辿り着けてないんじゃない? リーシェちゃん、コボルト見つからないからって探しに結構奥まで行っちゃったから…}
「ぐっ、なかなかキツイね…ワーウルフと戦るのは」
(コボルト30体の時についた傷も開きかけてる…これは早くしないと傷口が開いて悪化しちゃう)
『グルァァァァ!!』
「なっ!」
ワーウルフがリーシェへ襲いかかるが間一髪でワーウルフの攻撃を交わすが、爪の攻撃を受けてしまう
「ーッ! ……そろそろ体力的に限界か?」
{目に見えてリーシェちゃんが弱ってきてる!}
{コボルトの時の疲労や傷が多分響いてるんだ!}
{嫌だよ…リーシェちゃん…}
『ガァ!!』
「ぐっ」
リーシェは双剣で防御するがワーウルフによってさらにダメージを負ってしまう
『……ガルゥ』
「ガハッ…」
ワーウルフはリーシェを蹴り飛ばし、リーシェは受け身も取れずに地面へと横たわってしまう
{あぁリーシェちゃん! 立ち上がって!!}
{リーシェちゃん! リーシェちゃん!!}
{駄目っ! リーシェちゃんが!}
『ガルルル………ガァ゛ァ゛ア゛!?!?』
ワーウルフがトドメを刺そうとすると突然真っ赤な槍が飛んできてワーウルフの体に突き刺さりながら吹っ飛んていく
「何が…起きた…の…?」
{!?!? なんだ今の!?}
{真っ赤な槍が凄い勢いでワーウルフを刺して飛んでった…}
{とりあえず、助けが来た!!}
バサッバサッ スタ
「はぁ、なんとか間に合ったか」
~~~~~~~~~
「おっ! あれだな! だが、ここからだと確実に間に合わんな…よし!」
ラドゥは飛びながら自身の血を使って槍を作り出した
「穿て! ブラッドスピア!!」
ラドゥが投げた血槍は高速で飛んでいき、ワーウルフの胴体に突き刺さったままワーウルフごと飛んでいった
「よし、命中! さて、さっさと追いつかないとな」
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「ふぅ…さてと、まだ生きてるな、あのワーウルフ」
ワーウルフが腹を貫通したままの血槍をつけて戻ってきた
『ガルルルァ……』
「戻れ」
ラドゥがそう言った瞬間、ワーウルフに突き刺さってた血槍が勝手に引き抜かれてラドゥの手元へ帰った
「…貴様はどうやって殺ろうかね……おい、そこの女、お前はどうやってあいつを殺りたい?」
「私は…なんでもいい…」
{リーシェちゃんが助かった!}
{でもあの男の人、背中の二箇所に蝙蝠の羽生えてない? 気のせい?}
{気のせいじゃないぞ、全員見えてる}
{てか、あの槍勝手に動かなかった?}
{男の人が'戻れ'って命令した後に勝手に男の手元に戻ってった様に見えた}
{いったい何者なんだ? こいつは}
「なんでもいい…か。なら…解除」
血槍がその場で血へと戻り、地面に落ちた
「なら…コイツの具合を試してやるか」
ラドゥは腰に差してあった刀を引き抜き、片手で構える
「さぁ! お前は一体何回まで耐えれるかなぁ?」
_________
補足:ラドゥが血から作り出す武器をこれから血○と表記します
投稿頻度は二週間毎を目安に投稿します。
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