第14話 実験台
「な……何するんだよ!!」
咄嗟にその手を振り払うと、
「あれぇ?いいのぉ?」
男は顔を寄せてきた。
「今のうちに男に耐性つけておかないと、白鳥とキス以上のこと、できないと思うけどぉ?」
「――――!」
「まあ、あれもキスと呼べるかは微妙だけどね」
「……ッ!見てたのかよ!」
顔が熱くなるのが自分でもわかる。
「そりゃあ、実験ですからぁ?被験者のことは見なきゃでしょ」
「……ってことはやっぱり、お前は実験の――」
「おっと」
男は言葉を続けようとした青木の唇に人差し指をつけた。
「ここから先はノーコメント。実験に贔屓や特別があっちゃまずいからねー」
ニヤニヤと笑いながら男は首を傾げて見せた。
(……ああ、こいつ。どこかで見たことあると思ったら、あれに似てるわ。腹話術の人形)
一気に嫌悪感を爆増させながら、青木は男を睨んだ。
「じゃあなんで、俺には接触してきたんだよ……!」
「なんで、かー」
男は肩を竦めるとこちらを上目遣いで見つめた。
「しいて言えば、タイプだからかな」
「……はあ?」
男は楽しそうににんまりと笑った。
「俺は君の味方だよ……?」
そう言うと、男は青木の両頬を掴み、自分の唇を押し付けてきた。
「んんんッ……!!」
必死で押し返そうとするのに、腕の力が異様に強くて敵わない。
「ほらほら、口開けないと。まさか2回目もあんな小学生みたいなキスするつもり?」
生暖かい息を吐きながら男が笑う。
「……誰がお前なんかと……!」
「失敬な奴だな。俺が直々に実験台かつ練習相手になってやろうとしてんじゃん」
男はニヤニヤと笑うと、力を緩めやっと青木を解放した。
「自力で何とかするっていうなら止めないけど?上手なキスも、完璧な前戯も、濡れそぼるフェラも、最高のセックスも」
「ふぇ……フェラ?」
「え?しないで済むと思った?するに決まってるじゃん。君、BLとか読んだことないの?」
男は目を細めて笑った。
「百歩譲って、君がされる側だとしよう。果たしてその状態で男に咥えられて勃つのかな?」
男の唇が赤く光る。
「勃たなかったら、白鳥、傷つくんだろうな。知ってる?失恋って失う恋って書くんだよー」
男はケラケラと笑った。
「まあ、いいや。一晩じっくり考えてよ。俺で練習して本番に備えるか否か。時間はあるようでないぞ、死刑囚の青木君?」
男はそう言うと、片手をヒラヒラさせながら、教室を出て行った。
「……くっそ」
青木はその後ろ姿を睨みながら、ペッと唾を吐き捨てた。
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