回転の手
枕見
中断とみなしました。
指先は震えている。それでも、冷凍した血の塊に意識は集中していた。
机の上に並ぶ、赤黒い長方形の氷を数える。
6。
左手に、7つめがある。
基準値を満たした高揚からか、目がいつもより大きく開くのを感じる。
暖色の蛍光灯ですら、眩しくて痛い。
そっと机に置く。
予め付けた印に沿って、氷を並べていく。
途中で滑らせるのが面白くなり、軽く回してみたりもした。
消しゴムの裏にホッチキスの芯を刺し、机の上をスケートリンクの様に滑らせていた少年時代の光景が蘇った。
突如頭上で、何かが割れる音。
思わず身を屈める。
蛍光灯の破片が散り、机の上に降り注いだ。
スマートフォンのライトで暗闇を照らす。
印の中にあったはずの氷は、すべてはみ出していた。
それは7つ目の配置が完了する寸前だったのか、直後だったのか、わからない。
一気に汗が吹き出した。
"中断"したわけではありません。
"中断"したわけではありません。
"中断"したわけではありません。
断じて違います、まだ開始していません。
お願いします。
目を開けた、何も起きていない。
蛍光灯は割れたままで、破片に光はない。
スマートフォンのライトを、もう一度机に向ける。
氷は6つしかなかった。
氷の溶ける音が、しない。
耳に手をあてても、音はどこにもなかった。
静寂ではない。欠落。
次に、匂いが消えた。
血の匂いも、焦げた蛍光灯の匂いも、もう感じない。
残った視界が、ゆっくりと薄まっていく。
ライトの白が灰色に沈み、世界の輪郭が溶ける。
舌の裏に広がる鉄の味。
それも、すぐに消えた。
指先だけがまだ、机の上を探していた。
なにかに触れた。
滑らかで、冷たい。よく知っている手触り。
それを回そうとした瞬間、指が誰かに握られた。
回転が止まり、冷たさだけが残った。
回転の手 枕見 @makurami
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