紛らわしいんだわ
さて、どうしたものか。
今、コンビニで究極の選択を迫られているのはこの俺、有村翔だ。どのような選択を迫られているかって?それは…
『雪⚪︎だいふく』
にするか、
『ピ⚪︎』
にするかだ。
正直言ってしまえばどちらも買いたい気持ちでいっぱいなのだが、そこまで腹が減ってるわけでもないし、ちょびっとつまみたいだけなのだ。だったら適度に食えるピ⚪︎でいいじゃんって思うかもだが、実際はそうはいかない。数で言えばピ⚪︎の方が多く、その点雪⚪︎だいふくの場合は二つで済む。悩みどころである。
俺がそんな風に悩みまくっているところに、見覚えのある大きな人影が見える。どうしてこう言うタイミングで出会うのだろうか…
「…あ、せんぱいじゃないですか〜、奇遇ですね〜。せんぱいもアイスですか〜?」
「…そうだ、二つのアイスで悩んでるんだ」
「雪〇だいふくとピ⚪︎ですよね」
「どうして分かるんだよ」
もうこの後輩ちゃん怖い。
いくら進学校に来ることのできる頭の良い子だとしても、流石にここまで予測して当てられたら怖いし…どこで知ってるんや?
「…じゃあ私に一口くれませんか?」
「何で絹川に一口渡さなきゃいけんのだ」
「あ、せんぱいの事ですから届かないですもんねw、仕方ないですね〜ww」
絹川め…煽りやがって…
「…分かった、一口やるよ」
「あ…え…本当に良いんですか?」
「流石に好き勝手言われちまったら俺のプライドが傷つく」
俺は無意識に雪⚪︎だいふくを購入していたが、プライドを傷つけられたことに執着していたからかその事はまったく気づかなかった。
「…ほれ、口開けろ」
「あ…は、はい」
絹川は俺の身長に合わせてしゃがみながら口を開け、俺からの雪⚪︎だいふくを待っている。どうせだったらもう少し焦らしてみよう。
「あー…」
と、目を閉じながら待ち続けている絹川を見ると、何故だか…エッチな気分になってきた。多分本格的に疲れてきてるんだろう…今日は帰ったらすぐにベッドにダイビングだな。
「…もう!どれだけ待たせるんですか!」
「俺を揶揄った罰だ」
「もう…」
と、珍しく膨れっ面をし始める。
流石にこれ以上焦らし続けるのは酷と言うものだ。雪⚪︎だいふくをあげるとしよう。
「悪かったって、ほれ、口開けろって」
「こ、今度こそ信じますからね?」
そして今回も絹川は俺の身長に合わせながらしゃがみ、口を可愛らしくあける。まるで餌をくれるのを待っている子犬の様に待ち望んでいるのがよく分かる。
「ひ、ひゃやくしへふははいへふ…」
「口開けた状態で喋らないでくれ、何言ってるのかわからんから」
俺はそう言いながら雪⚪︎だいふくを一つ…と言うか一個丸ごと絹川の口に入れる。
「ふぇ、ふぇんふぁい?!」
「悪いな、一口分に分けるのがめんどくさくてw」
「ふぃほいふぇふほぉ…」
絹川は食べるのに苦戦していたが、少しすればもう何もない状態になっていたのを証明したかったのか、食べ終わると舌を出しながら
「ほらぁ、せんぱい?大きかっただいふくも…食べ終わりましたよぉ?」
「言い方が紛らわしいんだわ」
…やはり俺は、絹川に振り回されるんだなって、改めて感じてしまう日になったのだ。
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