六人目と七人目
チームエイトのぼくたちは、
「ここは通しませんわよ」
「わよ!」
そのずるいチームの中の一つ、チームスリーの
「はっ!」
「とりゃっ!」
木守さんと木挽さんはそれぞれ左と右の壁に右手を押し当てる。右手を起点として、木のツルが無数に伸びて、壁を覆っていき、天井までを埋め尽くした。あっという間に階段がジャングルだ。
「いけいけー!」
「やっつけちゃえー!」
上下から生成される葉っぱの兵隊たちが、ぼくたちチームエイトに襲いかかってくる。数で押しつぶす気だ。どこまでも卑怯。
「きゃあっ!」
攻撃手段は兵隊たちだけではなく、ツルそのものも武器となる。先頭でナイフを生成していた狐塚さんの身体にツルがぐるりと巻き付いて、天井へと巻き取っていった。
「狐塚さんっ!」
「キョウカちゃん! んあっ!」
梅崎さんまで巻き取られていく。ここでも足止めを食らうなんて、ツイてない。
「あーれー……?」
同じように仁平さんの身体にも巻き付いているが、このサイズでは持ち上がらない様子。二体の葉っぱの兵隊が、鋭いトゲを槍のようにして、仁平さんを脅している。
「さてと」
「狐塚さん、梅崎さん、仁平さんに、波風……チームエイト、あと一人、いなくない?」
「あの子でしょう? 帰っちゃったんじゃない?」
「あー。わかるー。学校来ても授業中寝てるもんね、樋口。戦闘訓練は、寝ているわけにもいかないものねー」
ぼくが葉っぱの兵隊たちに火炎弾を当てて一体ずつ処理している間の、余裕の雑談タイムだ。こうしているうちに他のチームが二階のターゲットを倒していたら、どうしよう。二階のターゲットが倒されていたら、屋上まで上がって、八体目――戦闘訓練担当との直接対決をするしかなくなってしまう。勝てるわけがない。
前回に続き、今回も時間切れとなったら、この五人で強化プログラムに放り込まれる。落ちこぼれの生徒たちを強制的に寮に閉じ込めて、朝は五時起きからの走り込み、昼は学校、夕方帰ってからの追加レッスン……!
「帰ってない」
「樋口さん!」
勝手に単独行動をしていた樋口さん、ここで合流。手には、消火器。
「噴射」
ピンを抜いて、ホースを掴み、樋口さんは消火器の液体を階段にまき散らす。葉っぱの兵隊も、ツルも、液体によってみるみるうちに退散していった。
「はーいー」
「ありがとう!」
「あんたが助けなさいよね! ルリが助けてくれるのを待つんじゃなくて!」
梅崎さんは仁平さんが受け止めて、狐塚さんはぼくが受け止めた。梅崎さんは素直にお礼を言ってくれているのに、ぼくは怒られている。ぼくは葉っぱの兵隊に刺されないようにするので手一杯だったから……。
「ターゲット、倒しておいた」
「えっ?」
「証拠」
しかも単独行動をしている間に、二階のターゲットを倒していたらしい。ターゲットを倒した後に入手できる撃破証を見せられてしまった。五人分ある。
「いつの間に?」
「あなた達が礼亜にやられている間に」
「単騎で?」
「……悪い?」
むしろありがとうではあるけども。この戦闘訓練って、五人で協力して一体のターゲットを倒す、戦闘術を学ぶためのものであって、一人で攻略すべきではないというか、一人でも倒せる難易度にはなっていないはずじゃ……?
「ハーフ娘のチート、許すまじ!」
「まじ!」
木々コンビが怒っている。ハーフ娘って、樋口さんへの悪口かな。
「行くわよ、みんな!」
「なんでカオルが仕切るのよ。さっきの円陣といい、暑苦しいのよね。これだから体育会系は嫌」
「まーまー。五人で力を合わせて、木々コンビをたおしちゃおー」
「うん」
「ああ」
男子一人に女子三十九人。敵は多いけれど、この四人とは、なんとか……うまくやっていけそうな気がしている。やっていけそうっていうか、やっていかないと、ぼくは卒業できないから、やっていかないといけない、の間違いか。
『そのうちタツナだけが生かされている理由もわかってくるでしょう。ねっ?』
【To be continued】
女子ばかりのクラスで波風を立てずに過ごしたい 秋乃光 @EM_Akino
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