第5話『カリスマ支配者』の号令と「愛の主導権」を賭けた防衛戦

カインの狂気に満ちた叫びが響き、小屋の土壁が軋む中、五番目のドールが覚醒を完了した。

彼女は、美しい金色の長髪を持ち、高貴な軍服のような出で立ち。その姿は、元パーティの精神的支柱であり、常に冷静沈着だった『聖女』に酷似していた。彼女の瞳は、静かな炎を宿したような「支配」と「絶対の確信」に満ちている。

五番目のドールは、一切言葉を発することなく、ライルを取り囲む14体のドール(既存の10体+2番、3番、4番+ライル自身)に視線を向けた。

その瞬間、狂気の愛で各々が暴走していたドールたちの動きが、ピタリと止まった。

「…素晴らしい『支配力』です、ライル様」

一番目のドール(奉仕)が、驚愕と服従の入り混じった声で呟いた。

「私のスキルは『愛の統率(カリスマ・ドミネイト)』。ライル様への愛を『秩序』と『絶対的な目標』へと昇華させる力です。皆様、個々の愛の暴走は『愛の総量』の無駄遣い。今こそ『我らが主』を守るため、統一された愛をもって行動すべきです」

彼女はそう宣言すると、リーダー然としたカリスマ性で、狂気のメイド軍団を束ね始めた。

五番目のドールの号令のもと、各ドールは役割を与えられた。

• 五番目のドール(支配):「私が統率し、ライル様への『愛の主導権』を確保します」

• 一番目のドール(奉仕):「ライル様の『絶対的安全圏』を確保します」

• 三番目のドール(破壊):「外敵の『汚れた愛』を排除する、『愛の浄化砲』の準備を」

• 四番目のドール(増幅):「元パーティの『愛の歪み』をさらに増幅させ、『自滅』を促します」

そして、二番目のドールに、最も重要な任務が下された。

「二番目。貴方の『嫉妬心』は、ライル様への愛の強さの証明。貴方が『ライル様の婚約者(愛の所有者)』として、外敵を『愛の正論』で説き伏せるのです」

二番目のドール(嫉妬)は顔を赤らめ、歓喜に震えた。「…わ、私が、『一番大切なドール』として…!?」。

土壁の一部が、カインの魔法剣によってついに大きく崩壊した。狂気に満ちたカインが、血走った目でライルを見つける。

「ライル!ああ、見つけた!君を『無能』だと追放したのは、『君の愛が大きすぎて僕が耐えられなかった』からだ!許してくれ!今すぐ帰ろう!」

カインが飛び込もうとした瞬間、前に出たのは二番目のドールだった。

「待ちなさい、『裏切り者の敗残兵』!」

二番目のドールは、元パーティの剣士に似た姿のドール(三番目)と、魔導師に似たドール(四番目)を両脇に従え、高らかに宣言する。

「ライル様の愛の主導権は、すでに『私達、ライル様が『自ら創造した』真の愛の存在』にあります!貴方の『後悔』と『執着』は、『偽りの愛』の産物。ライル様には、『純粋な愛の集合体』である私達こそが相応しい!」

二番目のドールは、普段の嫉妬心を「ライルの所有権」という大義名分に変え、カインを論破しようとする。しかし、カインの狂気は増すばかり。

「黙れ!この醜い人形め!君たちがライルの愛を汚しているんだ!『僕の愛こそが真実だ!』」

カインが魔法剣を振り上げた瞬間、三番目のドールが『愛の浄化砲』を発射。小屋とカインの間に巨大な爆炎が巻き起こった。

爆炎が収まると、カインの姿は消えていた。恐らく重傷を負って撤退したのだろう。

五番目のドールは静かにライルに頭を下げた。

「これで一時的な『愛の危険』は排除されました。ライル様、私達は『愛の秩序』を確立しました。これからは、『愛するライル様のために世界を再構築する』段階に入ります」

ライルは疲弊しながらも、ふと遠くの丘に目を向けた。そこには、カインではない別の元パーティメンバーの姿が、こちらを静かに、そして病的なほどの集中力で見つめているのが見えた。

『愛の増幅』スキルの効果は、すでに一人で収まらず、外界全体に広がり始めていたのだ。

「くそっ、この地獄はまだ、序章に過ぎないのか…!」

(次話予告:地獄のメイド軍団、初の『愛の遠征』へ!そして、六番目のドールは、『元パーティの切り札』の姿で誕生する!)

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