第4話 『愛の増幅』と『外界の汚染』。元パーティとの「命懸けの再会」

夜が明ける頃、ライルの小屋の周囲は、分厚い土壁と、それを監視する銀髪のメイドたちによって完全に隔離されていた。ライルは窓の隙間から、遠くに見える人影、元勇者パーティの剣士・カインの姿を確認し、焦燥感を募らせる。

そんな中、第四のドールが覚醒した。

現れたのは、長い黒髪をポニーテールにまとめ、活動的な旅装束をまとった少女。その姿は、ライルを追放した元パーティの『リーダー兼魔導師』に酷似していた。彼女の瞳は、これまでのドールたちとは違い、ライルへの「信仰」のような感情に満ちていた。

「ライル様…私は『愛の増幅(アンプリファイア)』。ライル様が『愛してほしい』と願う、その『心の微細な揺らぎ』を、『世界規模の執着』へと変換いたします」

三番目のドールが周囲を破壊するなら、四番目のドールは「愛を汚染」する。

「ライル様は、あの『裏切り者のパーティ』に、『自分を追放したことを後悔してほしい』と心の底で願っていますよね?」

「ち、違う!そんなこと…」ライルが否定する前に、ドールは微笑んだ。

「大丈夫です。ライル様は『愛されている』世界が『最善』。故に、私があの者たちに『ライル様への歪んだ後悔と執着』を植え付けます。

その頃、土壁の外側。元パーティの剣士・カインは、ライルの小屋があったはずの場所に突如出現した巨大な土壁に呆然としていた。

「馬鹿な…。こんな巨大な要塞、誰が、何のために…」

カインが土壁に触れた瞬間、四番目のドールのスキルが発動した。

『愛の増幅(アンプリファイア)』。

カインの脳裏に、ライルを追放した日の光景がフラッシュバックする。しかし、その記憶は激しく歪んでいた。

• 歪んだ記憶: 「ライル!君がいなければ、僕たちは『君の愛』という名の酸素を吸えない!追放したのは、君の『愛の負担』を減らすためだったのに…!」

• 植え付けられた感情: ライルへの「深い後悔」と、「今すぐライルを自分のそばに取り戻さなければならない」という狂気的な執着。

カインは突如、土壁を掻きむしり始めた。

「ライル!僕が悪かった!君は僕たちにとって『世界で唯一無二の存在』だ!今すぐここから出てきてくれ!僕が『君の永遠の騎士』になる!」

ライルは小屋の窓から、狂乱して土壁を叩くカインの姿を見て、恐怖で震えた。

「嘘だろ…あいつまでメンヘラに…!」

「素晴らしい成果です、ライル様」

三番目のドールは、カインを「排除対象」として認識し、壁越しに強力な破壊魔法を放とうとする。

その時、一番目のドールがそれを制した。

「お待ちください、三番目。彼は『ライル様を求める者』です。排除は『ライル様の愛の総量』を減らすことになります」

「ふざけるな!そんな『汚れた愛』をライル様に与えるくらいなら、『破壊』するほうが純粋な愛だ!」と三番目。

二番目のドールは、カインの激しい言葉を聞いて嫉妬で震えながら、ライルに密着する。

「ライルさん…あなたは私のものよ…!あんな『嘘つきの裏切り者』の言葉なんて聞かないで…!」

小屋の中では、「愛」の定義と「愛の独占権」を巡って、ヤンデレメイドたちの内ゲバが勃発。外では、スキルによってメンヘラ化した元仲間が、狂気の執着でライルを取り戻そうと要塞を破壊し始めた。土壁の一部が崩れ、カインの狂気を帯びた顔が小屋の内部を覗き込む。

「ライル!今すぐこの『醜い人形たち』を捨てて、僕たちのもとに帰ってくれ!僕が、『君の愛で満たされる世界』を作ってあげる!」

ライルの視界の隅で、五番目のドールが生成を完了しようと、ゆっくりと立ち上がっていた。

そのドールからは、これまで感じたことのない「異様なカリスマ性」と、「人を支配する力」が滲み出ていた。

ライルは、内側からの狂気と外側からの狂気に挟まれ、究極の選択を迫られる。

「くそっ、このままじゃ俺は、『内外両方のヤンデレに食い殺される』。どうすればいい…!」

(次話予告:五番目のドールは『カリスマ支配者』!彼女はヤンデレメイド軍団を率いて、『元勇者パーティの救出作戦』を決行する!?)

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