基盤(そのもの

ヒッグス粒子 case.4:少なくとも質量の概念が存在するる世界へ

とある世界に、突如として「ヒッグス粒子」が転移してきた。


それは物体でも法則でもない。


だが、この宇宙のあらゆる粒子にの「質量」を与える仕組みでもあった。




最初に変化を感じたのは科学者ではなく、人々がいつもの石ころを持ち上げたときに、妙な違和感を覚えたことが始まりだった。


軽くなったり、重くなったり、時にはほとんど「無重力」に類似した現象が訪れた。


街の車は動き出せず、あるいは止まれない時もあった。


また建物は強度を失い、橋はたわんで崩れた。




質量というものが「外部から加えなければ常に一定」だと、誰もが信じていた。


だがその信念は裏切られた。


世界は、あらゆる物質が「一時的に質量を失う」か「異様に質量を得る」状態に見舞われた。




やがて人類は気づく。


「質量」という仕組みが唯一の安定を保証していたことを、今さらのように。


それが揺らげば、運動方程式もエネルギー保存なども、ただの絵空事に変わってしまう。




そして最も恐ろしいのは、これは爆発や崩壊のように「一度きりで終わる事象」ではなかった。


質量があるかないか、重いか軽いか、それは刻一刻と揺れ動く。


この世界はついに、「動くだけで”奈落”に落ちるかもしれない」場へと変質したのである。


そしてすでにそれを誰もが理解していた。

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