第7話 統率者討伐作戦 始動
~次の日~
ひとまず、作戦を立てないと何もできない…というワケで一人で作戦会議を開く。
「…これより作戦会議を始める!」
まずは敵兵の確認からだ。
グリゴリ:初日と二日目に接敵した。おそらく遊撃部隊。
グリゴリーダー:未知数。グリゴリ一師団に1~3いると予想する。
フライングリゴリ:未知数。おそらく名前の通り飛んでいるのだろう。
グリゴリン:未知数。名前から予想もできない。
管理者:未知数。グリゴリ師団を10~20率いているかも?
統率者:未知数。多分強い。今回の標的。
こんなところだろうか?あと、冷たい焔ぐらいか…。
…情報がなさすぎる。とりあえず拠点を探しにいくか。
「おや、どこかへ行くのかい?」
「ええ、森の方に」
「なら、これを持っておいき」
シャレルさんから、バゲットに入った黒パンと柑橘類のジャムをいただいた。
本当にありがたい。
バゲットを持ち、森へと足を進める。
ギュムギュムと、ブーツが雪を踏む何とも言えない音を聞きながら周りに警戒する。
「バゲット…鞄に入れるか」
今、背負っている鞄…異世界のご都合的な無限収納だ、現状保存機能付きの。
「今日は…M4カービンにしよう」
M4カービンを構える。
アメリカで正式採用されていることもあり、集団戦も室内戦も成果を出すだろうという期待も込めている。
リロードをし、銃身を眺める。イメージ通りモデル725となっているようだ。
しばらく木々の間を歩んでいくと、複数の足音が聞こえてくる。
おそらくグリゴリの遊撃部隊だな。…ん?羽ばたく音?しかも後ろから…
「Gyaaaaaaagaaaaaaa!!!」
「っぶねェ!」
後ろからの攻撃を間一髪で避ける。自分が居た場所に銃口を向ける。
通常のグリゴリより細く長い手足、背中に生えた灰色のみすぼらしい翼、こいつがフライングリゴリか。相当高い静音飛行能力があるようだな。
パパパッ…と体の中心を撃ち抜く。
「Gyaaaaaaaaa…」
断末魔とともに絶命した。…前に殺した普通のグリゴリより体が小さく薄い。
空中からの奇襲に特化した形に進化しているから翼を撃ちさえすれば無力化できそうだ。
…ところでだ。さっきの複数の足音は…
「Gigaaaaaaa!!!」
「「「「「Gyaaaaaa!!!!!」」」」」
やっぱり見つかってたか。
おもむろに走り出し、十歩ほど進んだ地点で振り返る。近距離は圧倒的にこちらが不利だ。しかも相手は複数。
1,2,3…六体か。真ん中の奴はでかい上に金属の兜を纏ったグリゴリ…グリゴリーダーか。こういうのはリーダーを倒せば…。
パパパパパパパパパッ…グリゴリーダーの胸部に九つの穴が開く。
ゆっくりと巨体が後ろに斃れる。
「「「「「Gyaaaaaa!!!」」」」」
「なっ!!」
五体のグリゴリが我関せずという感じで突っ込んでくる。
「なんだこいつら!」
群集性を持つ生物としてはあまりにも不自然な対応。
まるで目の前の生命体を殺すことだけが目的とし、群集性も合理性の上に築いているに過ぎないとでも言うのだろうか。
パパパパパパッ…。
右から来る二体を撃ち殺し、棍棒を持って飛び掛かってきた一体を回し蹴りで樹に叩きつける。
「ッ!っぶね!」
飛んでくる矢をM4カービンで受け止める。
「弓兵も居るのか…。ッ!!」
樹の影からの死角の一撃を胸ポケットのナイフで受け止める。
「てめッ!…くそッ!」
ナイフで反撃をしようとするも矢が邪魔をする。
「ここらで協力できるやつのお出ましってわけか。まあ、関係ねえけどな!」
ナイフを落とし空いた右手にナガンM1895を作り出し、弓兵グリゴリの眉間に三つの風穴を開ける。
「あとは…ん?」
木々の間から走り去ろうとする最後のグリゴリの姿が見えた。
「…まさか!」
ナガンの狙いを定め、背中から両足と頭部を撃ち抜く。
…最後のグリゴリが雪の上に斃れる。
「…ふう」
無意識にため息が出る。それもそうだ、こんなに内容の濃い戦闘は今までしてこなかった。
リーダーを殺しても突撃してくること、自分の役割を理解し攻撃を受けないように立ち回る個体、生命を目の敵にしていながらも情報を伝えるために引く判断をする個体
…あまりにもイレギュラーが多すぎる。
ただ朗報もある。あいつらは視覚に頼り切っているからか、足音を殺すということをしてこない。つまり、耳を凝らせば不意打ちは防げるというわけだ。
精神的な疲れからか少しだるい身体を引きずって死体を調べる。
グリゴリーダーの金属の兜は…板金を張り合わせたようなものではなく、型を取って作られたものなのだろう。少しこの個体には大きいようだ。
フライングリゴリは翼の根元の筋肉が発達していない。滑空タイプなのだろうが、おそらく羽ばたきを必要以上にするようだ。でなければ、俺は最初の一撃でお陀仏だろう。
死体から得れるだけの情報を得たのち、雪に埋めた。
視覚に頼り切っているならば、埋めるだけでなんとかなるだろう。
…疲れた。森の浅いところに行き、スコップでちょっとした穴を掘る。
今日はここで休もう。
シャレルさんから貰った黒パンを食べ、日が沈む前に意識は深淵へと攫われていった。
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