第5話 獣人の村

サラさんに案内されて雪に包まれた村に到着する。

「ここが私たちの村です。」

「なかなか、素朴でいい村ですね。」

後ろを振り返る。

「…そんなことはないかも?」

門番と思わしき、男二人にすっげぇ睨まれてる。

ほら、右の方とか槍でデモンストレーションしてるよ。


「あの…村長にご挨拶させてもらってもいいですか?」

「あ、そうですね。こちらですよ」

他の家と変わらない質素な家に案内される。

「村長~、お客様ですよ~」

サラさんが呼びかけると、家の中からドタバタと物音が…。

そしてドアが強く開け放たれる。

「サラちゃーん!!!!」

村長はサラさんに勢いよく抱き着いた。

「大丈夫だった!?怪我は!?あ、足に包帯!誰にやられたの!?」

「そ、村長…お客様の前ですよ」

「そこのおっさんよりサラちゃんの方が大事だよ!」

…またか。そんなに老けて見えるのか?前々から元の世界でも思ってたが、三十路に厳しすぎないか、世間は。


サラさんが村長を宥めすかし、ようやく話せるように、

「アタシは香住。ここの村の村長をやらせてもらってる」

「俺は斎藤だ。よろしく頼む」

右手を差し出すが無視される。

「単刀直入に聞くけど、この村に何しに来たわけ?」

「ずいぶんな物言いだな。まるでこちらを悪と決め付けているみたいだな

「アタシは他の【転生者】と会ったことあるけど、全員力に溺れたごみ野郎だったからね。…どーせ、あんたもそーなんでしょ?」

「いや…ん?」

今なんて言った?

「今なんて?」

「だからぁ、あんたもごみ野郎だって」

「もうちょい前」

「他の【転生者】に会ったことある」

「え、転生者いんの?」

「なに言ってんのよ、いるに決まってんじゃない」

マジでぇ!?いんのかよ。じゃあなおさらあの爺ぶん殴りたくなってきた。

…転生者いるならそいつらに任せろよ。

「転生ってことは死んだのか?」

「デリカシーの欠片もないわね。そうよ、死んだわよ」

「爺に会ったか?」

「いや、めっちゃ美人なお姉さんだったけど」

…じゃあ本当になんなんだよ、あいつ。


「あのぉ…」

サラさんが控え目に手をあげる。

「どうしたの?サラちゃん」

「とりあえず斎藤さんは私の家に泊めるということでよろしいですかね?」

村長と視線を交わす。

「ぜひ!!」「ダメ!!」

二つの声が重なりながら響いた。


「てめぇ、俺とサラさんのお泊りを邪魔すんじゃねぇ!」

「あんたみたいなケダモノに、サラちゃん家泊まらせるわけないじゃない!!」

村長と取っ組みあいをする。…ちっちぇのに力強いな、こいつ!?

…かくなる上は!

「あのっ!」

サラさんが耐え切れないというように声をあげた。


「仲良くしてくださいっ!」

サラさんは怒ったように腰に手を当て、頬を膨らませている。かわいっ!

「すみませんでした」「ごめんなさいぃ」

取っ組み合いをやめて即謝罪する。


「そうだ。アタシがサラちゃん家泊まるから、アタシの家使いなよ」

香住が名案だというように言い張る。…こんのくそアマァッ!!

「じゃあ、そうしましょうか」

サラさんも笑顔で賛成する。

「じゃ、おっさん。部屋の片づけよろー」



夜、隣のおばあちゃんにサラマンダーをおすそ分けしてスープを貰った。

「…うめぇ」

しんみりとした優しい味わいにほろりと崩れる肉、ゴロゴロとした野菜…18で家を出てから食ってない母さんの味、それをふと思い出した。


部屋に目を向ける。…酷い有様だ。

片づけという概念が消え去ったとしか思えん。

「…あの娘は箱入りか?」


…結構重労働だ。異世界だからなにで散らかっているかと思えば…

服、服、服、服、服…。パリ〇レか?

…部屋にあった薪でを持ち上げる。

お宝だ!…いや、きたねぇ。

それにあの娘は好みじゃない。ガキンチョ体型すぎる。


「終わったァ~」

なかなか時間が掛かったが、片づけて寝るスペースは確保できた。

「この服たちは…まあ、いいか」

洗えとまで言われてないし、夜も更けて来たしな。

ソファに横になり、目を閉じる。

…急速に意識は沈んでいく。




~あとがきぃ~

どうも、みみみと申します。

今回も御覧いただき誠に感謝です。

ちなみに香住は、154cmの高校生です。ぺっちゃんこ。

斎藤が見つけたは…ノーコメントです。

では、また。

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