第4話 出会い

…瞼を透かすように、日光が瞳を突き刺す。

あまりの眩しさに目を開ける。見知らぬ天j…空だった。

どうやら無事に一夜を過ごせたらしい。

胸に抱いていたサラマンダーの内臓はまだ火が燃えている。

…寝ている間に一つの答えがでた。

『なぜ、サラマンダーが寒冷地にいるのか』答えは簡単だった。


「変温動物だからだ」

そう、サラマンダーは爬虫類…だから寒い場所では活動しづらい。

だが、自分の中に温度を上げる器官があれば寒さをものともせずに活動できる…。

そういう理由なのだと、自分を納得させた。本当かどうかは知らないが。


レーションを朝ごはんとして食べ、昨日と同じように沿岸部を歩き始める。

今日は、アントニオゾーリ社のクロノスを相棒に据える。

独特なフレームデザインを指でなぞりながら、木材の質感を堪能する。

「最高だな」

アントニオゾーリ社への手放しの称賛が口から漏れ出る。

ショットガンはあまり造詣が深くないが、これを機に造詣を深めるべきだな。


まったくもって関係のないことを考えながら、足を進める。

ギシリギシリと靴底で雪を踏みしめる音が響く。

しんしんと雪は降り、過去を塗りつぶしていく。

「…ぶえっくしょん」

breath me 雰囲気が台無しにもほどがある。


遠目に黒い影が複数見える。…警戒しながら近づく。

大中二つの影が、小の複数に囲まれている。…雪の反射で見づらいな。

しっかりと視認できる位置まで近づく。


大中の影は獣人だな。大が女性で、中がオスか。

小さいのは…あぁ、前に殺した原住民(仮)か。しかも五人もいる。狩りってとこか?

獣人の姉ちゃんは、足に攻撃を受けた感じか。それをlittle boyが守ってるってとこだろうが、いかんせん多勢に無勢だな。かすり傷が多い。

…気に食わんし、助けるか。


閃光弾を生み出し、投げつける。

「目ェ瞑ってろ!」

向こうの反応を確認せずに走り出す。目標は五体…一回リロードと近接だな。

駆け寄って景気づけに近くの原住民に風穴を開ける(上半身が吹き飛んだ)。

と同時に閃光弾が炸裂し、他四体の目を光が突き刺す。


二体目に近寄り、同じように風穴を開ける。

別に近づかなくても当たるんだが…獣人二人に当たるかもしれないから一応な。

リロードのためにクロノスの銃身を折り、二発装填する。

三体目、四体目も同じように処理していく。


「おっと、もう復帰したか」

五体目に駆け寄ると、攻撃を仕掛ける直前で飛び下がられた。

クロノスを投げ、素手で対峙する。

相手が右手を振りかざして飛び掛かってくる。

相手の間合いに潜り込み、右腕を腹部にめり込ませる。

軽く吹き飛んだ相手に駆け寄り、組み伏せて首を絞める。

…ゴキャリという嫌な音とともに、五体目も沈黙する。


投げたクロノスを拾い、リロードをしながら獣人の二人へと歩み寄る。

「…ッ!近づくなッ!」

おや、随分と警戒されている。

「近づくな?誰のおかげで助かったのか分かっているのか?」

獣人のガキに銃口を突きつけ、脅すように言い放つ。…え、悪い奴過ぎない?俺。

しばらくの睨み合いが続く…。

「あの、待ってください」


獣人の女の子が、止めに入ってくれた。よかったよ、止め時わかんなかったもん。

「助けていただきありがとうございました」

「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」

お礼に対して、ちょっと気取った声で返す。…なんだ?そんな目で見るなよ。

「ですが…ほら、ジンミもお礼言って」

「ありがと…おっさん」

…なんだぁ、てめェ。まだ、三十じゃい!


「とにかく無事でよかったです」

「その…あいにくお礼として渡せるものが何もなくて…」

「いえいえ、気にしないでいいですよ」

実際、善意で助けたからお礼されるとちょっと困惑してしまうからね。

…ごめんなさい、ちょっと下心はありました、すみません。


獣人のお姉さん、なかなかに立派なお体でして…へへっ

グラマラスでボンキュッボンで、でも優しそうで…。

しかも、コスプレ獣人じゃなくて人狼タイプの獣人だし…かなりタイプ。

…なんだよガキンチョ、そんな目で見るなよ。


…そのあとお姉さんの足を手当てし、一人で旅をしていることを告げたらお礼として村に住まわせてもらえることになった。あと、お姉さんは【サラ】というらしい。

この少年とサラさんは姉弟らしい。…よろしくな!弟君!

…めちゃくちゃ睨まれた。


あの原住民(仮)は【グリゴリ】と言って、生きているもの全てを目の敵にして襲い掛かる群集性のある魔物らしい。『見張る者』という割にはアグレッシブだな。

…ボスはセムヤザという名前かな?

いずれ戦う時が来たら確認しなくてはな。

『神は言っている。ここで死ねと』『そんな装備で大丈夫か?』

この二つは絶対にボスに言ってやろう。


そんなくだらないことを考えながらサラさんの隣を歩く。

村はもうすぐだ。




~あとがき~

作者です。御覧いただきありがとうございます。

今回も無駄にネタを突っ込ませていただきました。

元々サラさんらへんは獣人の男達との出会いにするつもりでしたが、変更してヒロイン(?)を出すことにしました。

コスプレ獣人とは、人間に耳としっぽを付けて獣人と言い張る派閥を指します。

喧嘩は受け付けますのでどうぞ。

おっさんは清潔感のない35以上or45以上が作者のボーダーとなっています。

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