第4節 〜〜〜別れと驚愕〜〜〜

「逃げろ!!、やつら幻獣が来た!!」

その怒号が聞こえた瞬間、病院の中は人々の混乱と焦りの声で埋め尽くされた。ある者は逃げようと他人の事を押し倒したり、ある者は何か武器になりそうな物を探していた。


「とりあえず、逃げよう」

石井の声と共に俺達3人は病院の玄関口から飛び出した。そこには既にたくさんの人がいた。

ただ、現実には存在してはいけないものもそこにはいた。

少し上を見上げてみると何かドラゴンのような幻獣が3体ほど羽ばたきながらこちらに向かってきていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」「おい、どけ!」

「もう、俺たちは終わりなんだ」

そんな声が一斉に耳に入ってきた。


「ワイバーンだ…」

そう石井は言う。

「今はそんな事どうでもいいから早く逃げるぞ!!」

たくさんの人が我先にと、逃げようとしたせいか、全くもって群衆は動かない。このままではあのワイバーン達に殺される前に圧死してしまうのではないか。それくらいの人数であった。

「ピーポーピーポー」

サイレンの音が近づいて来た。

良かった、警察が来てくれた。彼らなら既に何か対策を練っているのだろう。そう思っていると既に警察は群衆の前に到着していた。どうにか間に合ったらしい。

人々から少し安堵の雰囲気が漏れ出していた。

その時


「きぃぃぃぃぃぃぃぃ」

ワイバーンの甲高い鳴き声が聞こえてきた。

見てみるとやつらはもう目の前まで来ているではないか。

その瞬間から警察官達は自分たちの拳銃を取り出し、次々にワイバーン達に撃っていった。 


「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

意外と拳銃でもやりあえる相手なのかもしれない

よかった、俺たちは助かったんだ……


「グシャッ」

肉が切り裂かれるような鈍い音がした。


「え…?」

隣から石井とサクナの声が聞こえる。

あれ、警察官が見えない。どこに行ったんだ?

そう思い、少し下を見てみるとそこには警察官達の下半身だけがあった。

「え…?」

思わず、自分の口からもそうこぼれる。


「キャァァァァァァァァァ」

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ」

甲高い声と怒鳴り声が混じり、また押し潰されそうになりながら群衆は動き出す。


「キィィィィィィィィ」

ワイバーンが来た。そうか、俺の人生はもうここまで何だな。そう思い、石井とサクナの方を向いて別れの挨拶をしようとした。

「サクナ、お前は時々世話の焼けるやつだったけど、何気にお前がいなかったら寂しかったと思う」

「うん…」

サクナはそれしか返してこない。

「石井、おま…」

「まさか、こんな事になるとは思わんじゃん!!」

石井が俺の別れの挨拶を遮ってきた。

今更、そんな事言うのか?普通はこういう時別れの挨拶をすると思うのだが。

ワイバーンがもう真後ろまで迫ってきた。

もういいかそんな事。死ぬんだから。そう思い、少し怯えながらも目を閉じた。

3人で天国行こうな。神にまた祈った。


「ビューーーン」「ビューーーン」「ビューーーン」

空気を切り裂くような音がした後、3体のワイバーンが目の前へ落ちてきた。

よく見ると、全ての体に巨大な弓矢が貫通している。


「こちら、臨時幻獣特科ハンターズ公安課一班、目標到達地点に到達及び、必要撃破対象の討伐を完了」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る