第2節 〜〜〜嵯峨家〜〜〜
はぁ…はぁ…はぁ…
息を整える余裕も無かった俺は倒れそうになりながらも走り続けた。後ろからはまだ足音が俺を追ってきている。
もうそろそろ家が見えてくる。街中はいつもの神野区とは思えない様子に変わり果てている。
近くのパン屋さんは崩れ、この前芋煮をくれた近所のおばさんの家も一部が燃えている。
この時、心の中では諦めとそれでも妹の顔を見たい気持ちが入り混じっていた。
この角を曲がれば俺の家が見える!
心臓の鼓動が今までに無いくらい速くなっている
俺の家は予想通り崩れ落ちて降り、ほとんどの部分に火の手が及んでいた。
「サ、サクナァ!!」
そう叫びながら再び走り出す。
家の前で倒れ伏せている人の輪郭がぼんやりと見えてきた。その瞬間、俺は本当の絶望というものを味わった。
どんどんとその輪郭がはっきりとしてくる。
頼むからサクナではありませんように。
そう初めて神に祈った。
遂にその人物の顔が認識できた。その瞬間、俺はまた違う絶望を味わった。
「か、かぁさん………、、?」
確かにそこには倒れている母の姿がある。
なぜ。なぜ俺の母がここで倒れているんだ。
母の胴体には木の破片が突き刺さっており、母ももう意識が遠のいているようだった。
大量の血が母の腹部から流れ出ている。何が起こっているのかも分からず、ただ肺に酸素を取り込むことしかできなかった。
遂に、あの足音が自分の背中で止まった。
やはり、石井だったらしい。
彼も死んだような顔をしている。息を切らしているからなのか、唯一の友達である嵯峨健人の母が目の前で死にかけているからなのか、どっちかは不明であった。
少し、酸素の巡りがよくなってきただろうか。
その瞬間、俺は母の血だらけの体に飛びついていた。
母はもう出なくなりそうな声でこう伝えてきた
「サク、サクナをよろしくね」
その後母の体は動かなくなった。
嵯峨はまだ突っ立っているらしい。
よく聞いてみるともう1つ別の泣き喚く声が隣の方からして来る。隣を見てみると、顔をめちゃくちゃにしながら泣いている妹の姿があった。
そこからの記憶はあまり無い。
ただ妹と泣き喚き、石井に近くの病院に連れて行ってもらった。
ただ、石井も少し涙を流していたような気もした
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