第二十四章

 週間×〇社からの生地でTwitterが炎上した。その記事はありもしない嘘偽り憶測の生地だった。マネージャーのアパートからメンズアイドルが淫行していたと全くの偽りで数100文字のクソみたいな小学生みたいな記事が出ていた。メディアの中でワイドショーよりも低俗な週刊誌のゴミみたいな記事でも炎上するから世の中まだクソだと思った。だってミヤ〇屋レベルのワイドナショー見て、それが事実だって思う人が何人いるの? いや、多分事実だってこともあると思うけどさ、一応放送免許のあるメディアの“バラエティー”部門の放送で何が事実だって思うって話し。あんなレベルの内容で“報道”って思う人ほとんどいないと思う。

 『いやぁ、一部週刊誌で報道されていますけど、メンズ地下アイドルが女性マネージャーアパートで淫行となっていますけど、男性アイドルがふたりで淫行。いやぁ、荒んでいますね。本人たちは否定していますけど。実際はどうなんでしょう』

 本人が否定してんだからねぇに決まってんだろがボケ! 頭悪いのかよ。って思ったけど、家の前で多くのマスゴミが集まってそんな強がりな発言も言いずらくなってきて、Twitterはめちゃくちゃ荒れて更新する気にもなれなくて、というかスマホの通知が多くて、それだけで病みそうになるから思わずアプリをアンインストして、どうやって調べたのか家の電話には「〇〇テレビですが、週刊誌の報道に関して質問が———」とかそうっいった内容が多かった。何十回も否定したのに世間はIQが低いのかなかなか理解してくれない。

 「たく、しつこいな」

 カーテン越しに様子を見ていた竜胆もすっかりノイローゼ気味になっていた。

 下で母親がマスコミ相手に怒鳴っているのがわかる。それが炎上の火種になろうが母親に知った事ではない。ネットやらないからな。近所でも敵なしの母親に、むしろ心強かった。心配なのは春樹だ。春樹は一人暮らしだし、仕送り生活で頑張っている中でこの状況だ。

 「えつや! 車に乗りな! 春樹君のところに行くよ」

 部屋をノックするなり入ってきた母親にほとんど強引に連れられて車に乗る。白いアルファードで駐車場から出る。マスコミの群れをクラクションを鳴らしながら威嚇する。アクセルをゆっくり踏みながら、轢かれても知らないよというように、というかこの母親なら本当に轢いても堂々としてそうだ。

 「おらおらどけ」

 まるで戦車のように威嚇して車は春樹の家に向かう。



 八王子のマンションで春樹は暮らしていた。

 エントランス前にもマスコミが群がっているのを母親のアルファードが突っ込む。驚き脚立から落ちたマスコミもいたが、文句を言う前に母親が睨む。こういう連中は本当に強い相手がいると怯むから弱い生き物なんだと思った。

 「春樹俺だ、開けてくれ」

 エントランスは合鍵で開けたが友達と言ってもインターフォンを鳴らした。そしたらガチャと鍵が開き、薄暗い部屋から春樹がパジャマ姿で出てきた。怯えた様子だった。

 「竜胆……」

 憔悴しきった様子の春樹を竜胆は思わず抱きしめた。

 「春樹」

 「竜胆……僕、ふぁぁああん!」

 「ごめんな、ひとりで辛かったな」



 春樹は部屋の真ん中で膝を抱えて座っている。

 竜胆はキッチンを借りてカフェオレを作った。乳製品は安心を得られるし、カフェインは落ち込んでいるときは気分を上げる作用があるし、こういう時は飲んだ方が良い気がする。安眠には敵だけど、普段飲んでいる人がコーヒーを急にやめると落ち込みやすくなったりするらしい。

 スマホの通知はさっきから止まない。“淫行アイドル” “裏切者” “淫乱” そんな内容だった。竜胆は春樹のスマホから電源を落とした。

 「なんで律義に通知鳴らしてんだ」

 「だってアイドルだし」

 「アイドルなら通知切れ、いちいち反応気にしていたら病むぞ。てか病んでんだろ」

 「どうかな……」

 そう言いながら竜胆の淹れたカフェオレを飲む。

 「おいしい」

 そう嬉しそうに笑みを浮かべた。落ち込んでいた表情をしていた春樹しか見ていなかった竜胆はそんな春樹を見れて嬉しかった。

 「良かった。俺さ、しばらくここに通うようにするってか、泊っていいか? 俺と違ってお前ひとり暮らしだし、色々大変だろ? だから———」

 春樹に抱き着かれた。急なことで体勢を崩して倒れてしまった。

 「春樹? 大丈夫だよ」

 そう言いながら春樹の頭を撫でていたら、彼は竜胆の唇にキスをした。柔らかい唇だった。春樹はしばらくして何かに気づいたように驚き、竜胆から離れた。

 「ご、ごめん」

 顔を赤らめて言う。

 「ああ、大丈夫だ」

 正直、何が起こったのか竜胆は理解していなかった。

 「今のは違う。そ、ほら、立ち眩みして」

 「ああ、立ち眩みな! それならしょうがない」

 「うん、しょうがないね!」

 お互いに言い聞かせるように言う。

 「あ、俺お代わりしてこよう! 春樹もどうだ?」

 「あ、うん。ありがとう」

 そう言ってコップを竜胆に渡す。春樹の指が触れた。

 「あれって事故で良いの?」

 竜胆が言う。

 「事故じゃないよ」

 そう言うと春樹は竜胆の唇にキスをした。

 ふたりはコップをテーブルに置いてベッドで裸になった。竜胆から服を脱いで春樹を抱きしめた。良い匂いがする。

 「お風呂入りたい、あの日からずっと入れてないから臭いでしょ?」

 竜胆は春樹の首筋の匂いを嗅ぐ。

 「春樹の匂いがする。良い匂い」

 「変態。男同士で何やっているの?」

 「先にキスしたのはそっちだろ。てか、セックスの仕方が分からない」

 そう言うと春樹はクスっと笑った。

 「おいで、教えてあげる」

 そう言って春樹は竜胆の首に手を回して引き寄せる。春樹は首にキスをした。舐めるようにして、その感覚が気持ち良くて、春樹の事を抱きしめた。

 「もっと欲しい」

 「いいよ」

 竜胆は春樹に溺れるようになっていった。

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