第十七章
「悠、週刊誌に撮られたって本当?」
アリスが心配そうに言う。
「うん、まだ記事になってないから社長が裁判で争うみたい」
「それでも、記事の発行は止まらない気がする。よし、みんなSNS戦略だよ」
「どうするの?」
アリスはウィンクする。
「オセロ戦略。クロをシロにしちゃえばいいんだよ。アイドルは恋愛しちゃいけない風潮を壊しちゃえばいいんだよ。今時、結婚しているアイドルだっているんだし世間が古いんだよ。それに、みんな彼女や彼氏いるよ」
「え」
「例えばハヤトは高校の頃からの彼女と付き合って居るし、綾香はホストクラブに通っていて、ユウトは確か彼氏が居たはず。ほら、秘密のないアイドルなんていないよ」
「でも、SNS戦略って」
「簡単、彼女に追わせポストを投稿するの?」
「え、それって」
アイドルにとって自殺行為。
「炎上はするね。でも、本当のファンはそんなことで離れたりしない。ショックを受けるとは思うけど、本当のファンだったならついてきてくれる」
じゃあ、早速。とアリスはスマホを取り出し悠にキスをする。ほっぺではなく唇に。
驚いているとびっくりする速さでスマホを操作する。
『悠とキスしちゃった! 僕の初恋の人、初めてを貰ってくれた人』
そう投稿された。インスタでは瞬く間に投稿の真意を探るコメントであふれた。
『どういう事? 付き合ってた!?』
『はじめて!? え、どういうこと』
『アリス説明して』
そう炎上しているうちにみんなも過去の写真から彼女がいた写真や匂わせを投稿する。
メンバーのSNSも軒並み炎上した。
しばらくして事務所の廊下を走る音が聞こえる。
「お前たち! 何しているんだ! 今すぐ投稿を消しなさい!」
怒った竜胆社長が入ってきた。
「嫌です」
アリスがきっぱりいう。
「なに?」
「悠に彼氏が居たから週刊誌が狙ったんですよね? でも、今時、彼氏彼女がいるアイドルなんてたくさんいる。それでもファンは応援してくれる。ショックは受ける子もいると思います。でも、アイドルはみんなの恋人で会っても、アイドルにだって恋する人権があるんです。奴隷じゃないんです! だから悠が彼氏居るからって炎上するなら、みんなで炎上してやろうって思ったんです」
「アリス、だが燃え上がった炎が暴走することもあるぞ」
「ええ、だから今回の件をyoutubeで説明する機会をください」
「何を言う気だ」
「今回の悠の件、この子に彼氏が居る事、そしてみんなにも彼女がいる事。その事実とアイドルだって恋愛する権利があるって事、それを否定する権利は誰にもないこと。そして、アイドルの恋愛事情に付け込んで事務所と悠を脅した週間○○との訴訟問題があることを公表します」
「そんなことしたら……」
「はい、事務所も週間○○も炎上します。一緒に巻き込んでやります」
その言葉に竜胆社長は大笑いした。
「ふはははは! なんという力技だ! うちもろともクソッタレ週刊誌も炎上させるか! なるほど、これでは裁判問題どころではないな! いいだろ! RND公式アカウントを使うがいい!」
「ありがとうございます」
「「「ありがとうございます!」」」
みんなも社長に頭を下げる。
「ふん、私は良いアイドルを持った」
そう満足そうに部屋を出ていく竜胆社長。
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