第十三章

 「ひとつ聞いても良い?」

 セックスのあと、悠はずっと思っていたことを聞いた。

 「叶はさ女の子が好きなの? それとも男の子が好きなの?」

 「俺はゲイじゃないから女だな」

 「じゃあ、質問変えるね。男の子が女の子の格好をした子が好きなの?」

 服を着る途中だった叶の手が止まる。

 「どういう意図の質問だ?」

 「そのままの意味、男の娘界隈が好きな人いるでしょ? あの界隈って男の人が大半らしくて、叶もそうなのかなって」

 「まぁ、嫌いではないかな。ニューハーフでAV見たし、でも男の娘界隈が好きってわいじゃない。お前と付き合って居るわけだし、女でオナニーするわけにもいかないだろ」

 「僕と付き合って居たら男だろうが、女だろうが、男の娘だろうが結局浮気なんだよ?」

 「確かに………」

 「大変だね、街中でも目隠しして歩かないと僕に刺されちゃう」

 「浮気した人が上手に立つな。会うことのないAV女優とアイドルとセックスしたアイドルとじゃ罪の重さが違うよな?」

 そう言って叶は悠の股間に手をやる。

 まだ少し大きくなっているアソコに手をやりながら叶は緩くいじる。いじりながら悠の耳元で囁く。

 「そう言えばアリスとはどうして寝た?」

 尋問するように叶は悠の乳首を揉む。

 「………アリスが僕でオナニーしていて、それで、アリスが可愛く思えて……ごめんなさい」

 「アリスとはこれからも仕事するんだよね?」

 「うん……」

 「じゃあ、これからもアリスとセックスするの?」

 「しない。だから許して」

 「一時の迷いだったの?」

 「うん」

 叶は執拗に悠の耳を舐める。わざと息を掛けて悠の顔を真っ赤にする。いたずらしながらもアソコを触るのをやめない。

 「アリスが可愛くて、アリスが好きな人が悠だった? でも、悠は俺が居るから良いけど、アリスはどうかな? ひとりで慰めてアリス可哀想」

 叶は舌で悠の顔を舐める。

 ゆっくりなめながら首筋に降りてそこから乳首を舐めていく。快楽がゆっくりと下に向かう感覚に悠は力なく耐える。抗おうと思えば抗えるけど、悠は罪の意識から抵抗しなかった。それもあるけど、本心では叶に犯されたいと思ってもいる。

 「悠と寝た夜が忘れられず、アリスが言い寄ったらどうするの? 襲われちゃったらどうするの? ひ弱な悠は抵抗できないままレイプされちゃうね?」

 そう攻めながら何処か楽しそうな叶は悠のアソコに顔をやり、フェラする。

 「ふぃぎゃうッ!?」

 いきなり激しいフェラに悠は耐えられず泣きそうになる。でも、耐える。

 「ぷふぁ、浮気ってそういうことだよ? 悠も苦しいし相手も苦しい、だれも幸せにならないのが浮気だよ? 分かった?」

 「あぎゃッ………わッ、わかりました。もう、しません……」

 「ふん、ふぃいこ(うん、良い子)」

 その言葉に叶はもう許していた。けど、止めなかった。やめても今度は別の苦しみが待っているし悠もそれを望んでいない。本当に嫌なら逃げ出すし、そうしないあたり気持いいんだ。それとあと、罪悪感だと思う。そのことに気づいているから叶は止めなかった。

 (あと、一時間はこうしていよう)

 自分でも自覚していなかった独占欲と嫉妬深さに驚いた。アリスと寝たと確信したとき、お腹の奥でどす黒い感情が渦巻いた。悠をめちゃくちゃにしたい感情と閉じ込めてでも離れさせたくない気持ちと、大切にこれまでも過ごしていたい気持ちと、ずっといちゃいちゃ楽しくしていたかった気持ち。

 悠の事は大好きだ。ずっとずっと大好きだ。でも、悠が俺から離れるのが怖い!

 いつまでもいつまでも傍にいて欲しい、一分一秒でも離したくない!

 解放なんてさせない、悠は俺のモノだ!

 いつの間にか泣きながらフェラしていた。嫉妬の感情が高ぶってコントロールができない。

 「大丈夫だよ」

 さっきまでただ喘ぐばかりだった悠が起き上がって叶を優しく抱きしめた。

 自分の我慢汁が溢れる口にキスをした。舌を入れない優しいキスだった。

 「どこにも行かないから、安心して」

 そう言って優しいキスをまたした。

 ああ、そうだ。みんなこの優しさに毒されてしまうんだ。悠の甘い香りに誘われて蝶のようにその蜜を吸いたくなってしまう。だからみんな悠を好きになる。独占したくなる。独り占めして高い塔に幽閉して誰も彼も来れないようにしてしまいたくなる。

 悠の蜜は毒だ。でも、その毒ほど甘美に男を冒す。

 「大好き」

 そう言って悠は叶にキスをする。

 「俺もだ」

 叶はさっきまでの嫉妬の炎が消えて、いつの間にか甘く誘惑満ちるこの毒のバラに沈んでいった。

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