第七章
TikTokで男の娘アイドルのショートが流れてきた。
地雷系メイクで涙袋と紫のアイラインが引かれ、ショート金髪の男の子が出てきた。舌を出して見えるタンピ(舌ピアス)がエロ可愛くてすぐに人気になったこのグループは、全員反則級に可愛くて、すぐにインスタとyoutubeに飛んだら公式からアイドル募集のトップページが見えた。応募資格は18歳以上、高卒以上、歌やダンスに自信のある方と書いてあった。こういう募集には必ず未成年者には保護者の同意が必要だ。その時点で悠には応募資格がない。ちなみに保護者の承諾や同意がない事務所は性的搾取される可能性のある悪徳事務所の可能性がある。すべての事務所は必ず保護者の同意なしに、未成年者と芸能契約を結ぶことはできない。
だから、今映っている子は20歳以上か同意を経た子になるけど、歌詞にタバコや酒が出ているから多分成人している。
なんとなくほかの事務所を探していたら16歳から募集している事務所があった。ここも契約には保護者の同意が必要だけど、応募する限りはその縛りはない。あくまで契約までいけたらの話しで、応募するだけなら自由だ。
ドキドキしながら応募フォームを押した。ネット応募では所属事務所/学校と氏名(本名)、年齢・住所が記載できる欄があり、最後に応募動機と自己ピーアール500文字以内があった。その他に下記住所に履歴書を送付してくださいとあり、渋谷区〇〇-〇〇〇明治神宮通り桜ビル4F、DOBLLとあった。ドブルと読むらしい。調べると大手事務所から独立したまだ弱小事務所らしく、タレント数はまだ6人だった。それでも箱ライブ出来ているし、資金面は良いのかな。
箱ライブとは事務所単独のライブハウスでの演奏の事だ。百万は軽く飛ぶからその資金を借金なしでできているのかは分からないけど、評価の一つにはなる。
「うーーーん」
悠は悩むがこういう治安悪いアイドルグループが好きで揺れていた。
まぁ、治安悪いっていうのは雰囲気で、実際はインスタでもメンバーは優しかったりするし、中にはメンバーで繋がっているよねって感じの配信もある。具体的にはふたりで住んでいるとか。
「何見ているんだ?」
「あ、うんとね、偶然アイドルオーディションみつけて……」
「受けるの?」
「うん」
「いいじゃん」
「え」
「やれば」
「いいの?」
「なんで俺が良い悪い決めるんだ?」
「だって反対されるかと」
「するわけないやん。ちゃんとしたところだったらな」
ちゃんとしたところだよな? と叶は心配したが大手の子会社だから多分大丈夫だと思う。と伝えた。
履歴書はほとんどバイト面接とそんなに変わらなかったけど、でもバイトでは書かないようなダンスや歌の事を書いた。声には自信あったけど、どうなのか分からなかった。その他、ボイスに歌声を録音して履歴書データをメールで送った。
その一週間後、書類審査には通過した。そのことを伝えたら「まじかよ! 俺、小説で一回しか通過したことないと言われた。応募してたのかと思ったら、三年前から応募していたらしい。倍率はアイドルは一万倍、小説は六十万倍。小説は誰でもできる特技なだけあり募集人数に対して応募が多いが、商業化の面では小説の方が難しくて、その中で小説の形になっている人は一握りらしく、最初の時点で七割は落とされるらしい。どっちが難しいかは倍率基準では測れないけど、どちらも技能が求められる点では同じようなものだと思う。
その結果……。
「やば二次選考通過した」
その時点で心臓バクバクの悠は気絶しそうだった。
最終選考は東京で決まりだ。すぐ行ける場所だが、遊びで行く東京と人生を賭けていく東京では覚悟の度合いが違う。
電車で40分で渋谷の事務所に来た。
そこはワンフロアの小さな事務所だが、部屋数は多くなく、会場としてフロアがあり、仕切りで奥側に事務室があるような感じ。トイレは男女で分かれているが、メンズしか今は利用していない。
「皆さん、番号札順にこちらにお入りください」
そう女性スタッフに言われて入った場所には三人のスーツの人がいた。そのうちの一人はインスタで見たことがある。有名なプロデューサーだったはずだがどうして小さな事務所にいるのかと思った。
「ではお名前とアピールポイントを教えてください。では48番さんから」
「はい」
悠が呼ばれた。
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