第三章

 「昼から重役出勤かよ。ラブホ帰りか?」

 同級生の日向にそうからかわれた。

 悠の席は真ん中から五番目の席、叶は窓際で一番後ろだから叶の席が一番よく見える。

 昼休みにはグループを作るが、悠はよく日向と食べる。叶は一軍組と談笑しながら購買のパンを食べているが、ウィダーとコーヒーゼリーしか食べない。小柄、細腕、低燃費、ピアス好きな悠の耳はあと開ける場所がないほどたくさんのピアスが飾られている。

 「うん、ちょっと楽しみすぎて」

 「誰と付き合うのも自由だけど、もう少し大切にしな」

 そう言いながら日向はヒソヒソと小声になる。

 「聞きたいんだけど、ちゃんと恋愛なんだよな」

 「うん」

 「じゃあ、彼女誰か教えて」

 「いや……それは……」

 「売春しているって噂だけど、してないよな?」

 「してないよ」

 「ほんと?」

 日向は本当に心配してくれている。だから嬉しいけど、叶と付き合っているのは秘密だ。叶はバスケ部に所属していて、エースだから迷惑を掛ける訳にはいかない。本人も秘密にしているみたいだし、悠が勝手に秘密を人に話すのもダメかと思う。

 「あともう少し食べなよ」

 「いいよ、吐いちゃうから」

 小食の悠にとってこの量がちょうどよい。

 レジ袋の中にごみを入れる。

 「ちょっと捨ててくるね」

 「おう」

 そう言って廊下に出てごみ箱に入れる。うちの学校は教室にごみ箱がないから、教室ごとに廊下にごみ箱が設置されている。赤が燃えるごみで、青がプラ、黄色がペットボトルで、白が缶ごみ。

 「ふぅ……」

 そのままトイレに行く。

 中には誰もいない。男子トイレでも女子生徒の格好をした白い猫耳ヘッドフォンを付けている中性型のピアス男子が入ってきたらみんな驚いちゃう。

 悠は個室に入るとそのまま中に入れていたバイブを取り出す。ずっと低振動で流れていたバイブを抜くとたくさん濡れていた。

 「叶の変態……」

 「誰が抜いて良いって?」

 「しゃっ!?」

 個室に叶が入ってきた。

 鍵を閉め忘れたからいたずら好きそうな顔で叶はキスをする。ラブホの癖でトイレの鍵なんてほとんど閉めたことなかったから、こういう時、簡単にレイプされちゃう。

 「入れなおして」

 「うん」

 そう命令されて悠はバイブをまた少し濡らす。

 口に入れて唾液で濡らしながらまた入れる。見られながらの挿入で恥ずかしい。

 「……入りました」

 「うん」

 そう言うと叶はバイブのスイッチを入れる。

 「あっ……」

 「じゃあ、そのまま放課後までね」

 「うん……」



 授業中、バイブの音が大きくなった。

 音が先生に聞こえないように強く締めると身体に振動が伝わって変な気持ちになる。

 叶はバイブでは感じない人でマッサージ機でどんなに攻めても叶は全然イかないから、この地獄の快楽は分からない。こんなシチュエーションはmy fansやファンティアでもなかなか見ない。だからどんどん興奮した。

 「誰だ携帯鳴っているの?」

 先生が気付いた。それでも叶は止めてくれないから必死に締めるが、そうするとどんどん濡れてしまって落ちそうになる。落ちないように、濡れすぎないように必死になりながらバイブの音を抑えるが、抑えるほどアソコの刺激が強くなる。アソコと言えば前にもテープで貼られた。アダルトグッズ専用のテープだからはがしても痛くはないけど、女性器に張り付けるもので、メンズ用ではないから股で抑えている。

 『パンツ脱ぐか?』

 トイレでそういう話になったが、パンツなしではバイブが落ちそうだから断った。ズボン履いていたら大丈夫かもしれないがスカートだからこういう時困る。

 「まったく、誰だ、止めなさい」

 先生は分からず諦めた。

 授業終わりまであと15分。この地獄に耐えられたら解放される。それが待ち遠しいようなもう少しこの地獄を味わいたいような不思議な感覚で、またラブホに行きたいと思った。



 「めっちゃ濡れてるじゃん」

 校舎裏でスカートをたくし上げてバイブを抜く。前もテープをはがしてもらう。痛くはなかった。アダルト企業の開発力ってすごい。よくAV配信でアダルト関連のグッズの話題とか聞くけど、日本のアダルトグッズの開発力が本当にすごくてピストンマシンだって十万のものだってあるし、本当に効く媚薬まであるから、通販が楽しくて仕方ない。気が付けば大切な場所を開けているメイド服やバニーコスが増えたし、そうじゃないコス衣装もクローゼットにたくさんあってショート動画で撮っている。

 『まじで男の娘?』

 『ぶち犯したい』

 『メイクなにつかってます?』

 そんなコメントが多くて、メンズからのコメント本当に嬉しい。myfansではコメントが少ないのにハートが三桁行くけど、表ではどちらも多いから嬉しい。

 「ムラムラした。ねぇ、ラブホ行こうよ」

 「今日は普通に買い物」

 「ええラブホ! ラブホ! ラーブーホー!」

 「駄々こねるなよ。金欠なんだよ」

 「奢るからー」

 「はいはい、次回な」

 「ええ」

 こういう時、奢るからラブホ行こうとしないあたり叶好きー。

 奢ってもらうからラブホを選択するような男はクズしかいないから、叶の事、ちょっと尊敬している。めっちゃ変態だけど。


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