第二十九話 過去の記憶と陽だまり
店内は静まり返っている。
緑が
「わしはみんなからいらない存在になってしまった神様なんだ」
いらない存在?
「気づいたらね、ここに村があったんだ。それが最初の記憶。村の真ん中に僕はいた。みんな優しくてね、贅沢ではないけど、たくさんのお供え物を持ってきてくれてたんだ。わしにはできることなんてないんだけどね。それでも子供たちがわしの家の周りで楽しそうに遊んでくれたりすると、わしもそこに交じって
おいおいそれは良いことなのか?
「そのうち段々と村が栄えて行って、道がキレイになって、鳥居が建てられて。村も大きくなって、家がたくさん増えて、人もものすごく増えたんだ。」
俺はこの間見た鳥の神様の記憶を思い出す。これはその後の話なんだろうな。
「村はにぎやかになったけど、途中からね、誰も来なくなっちゃったんだ」
新しい人が増えすぎて、神様を
「それからわしはまた誰かが遊びに来るのを家の前で待っていた。ずっとずっとずーっとね。だからなんの神様でもないんだよ」
困ったような笑顔で緑に返事を返すと、
初めての味に驚きながらも美味しいとわかる表情をこぼす
「祀られているときに村の人に何か言われたことはないのか?何もないのに祀ることはそうそうないと思うんだが」
そう、祀られるからには何かしらの理由があるはずだ。
亀の時も、鳥の時も、ちゃんと祀られる理由があったのだから。
「んー、特に思い当たることはなかったかなぁ?そもそも
「ケーキ取り上げるぞ」
「ごめん!ごめんて!!」
こんなんじゃちゃんとした話は聞けなさそうだな。小さな神様は
そういえば黒はこの町に長く住んでいるはずだ、何か知らないだろうか?さっきからいろいろ話を聞いて思い出そうとしてるみたいだし。
「なぁ
「いやぁ、わしにはなんとも。社があったことは知っておったがのぅ。それも小さい頃の話で今の状態になってしまってからは、もう取り壊されてしまったものだとばかり思っておったわ」
確かにあんな状態じゃぁなぁ。
「あの!皆さんに
緑がいきなり叫んだ。なんか、力が入ってるな。
「本当か?本当に綺麗にしてくれるのか?」
緑は
こりゃみんながやらないと言っても緑は一人でやるんだろうな。
まぁ言わないけど。
「何を当たり前のこと言ってんだ悠斗?」
「へ?」
「ふぉっふぉ、やらない理由はなかろうて」
「こんなかわいい子供が悲しんでいるんです、綺麗にして祀らないと!」
間違いなくこの場の誰よりも年上だけどなこの子。
「大地君、道具はあるかしら?」
「倉庫にあったと思うが、足りなければホームセンターに行けばいいだろ?」
全員がニカッと笑みを
そんな話をしているうちに外は晴れてきた。これなら作業できそうだなと考えていると……
ピシッ
と何かが割れるような音と空気が
嫌な予感がしてみんなを見回すと、みんなの顔が緊張しているのがわかる。
赤に目線を移すと俺に向かって静かに
久々の怪人だ。
慌ててみんなで店の外に出る。
嫌な感じはしたが、まさかここに出るのかよ。
怪人が出現したのは俺の店の真ん前。ここに出現したのは初めてだ。
「
「わ、わかった!」
さすがに神様と言っても無事な
今度の怪人は大きくはなかった。全身が水晶のような人間、そういうしかない見た目の怪人。
「お前の目的はなんだ?今までのやつらと同じで地獄を見せてやるって感じか?」
赤が対話を試みる。いつもなら変身してすぐに攻撃していたが、それは相手が出現して
しかしこいつは違う出現して今この瞬間も、攻撃してこようとはしてこないし黙ったままだ。
「私をあんな下等な奴らと一緒にしないでもらいたいな」
!?
「まさかちゃんと答えてくれるとは思いもしなかったわ」
「あいつらはただ暴れたいだけなのよ。私はちゃんと目的があって来ているもの、
水晶人間が静かに、
「それで?目的ってなんなんスかね?」
「そうじゃな、
「
力の原点?なんじゃそりゃ?
そこまで言うと水晶人間は鳥居の方に向かって腕を伸ばす。
肩のあたりが光り始めたかと思うとその光はゆっくりと手の先の方へ……
!!
「まずい!止めろ!!」
俺の叫びと共にヒーロー達が駆け出す。
「
「
「
「笑いも涙もひっくるめてー
「
「
「フロスト·ビアース!」
「フルバースト·ジャスティス!」
「
「
ヒーローたちの必殺技で水晶人間が
しかしホッとしたのもつかの間、
ダメだ、間に合わないか!
「やれやれ、はよ
黒の腰に付いている
「……
「正解じゃ!」
嬉しそうな
黒の肩に小さい亀が現れた。え?小さいまま?
「頭に浮かんだ言葉を叫ぶのじゃ!あやつの
「
ヒーローたちの前に大きな
水晶怪人の手から太めのレーザービームの様なものが放たれるが出現した
「チッ……
「
亀、もとい
「……力の原点の一つが解放されていたか。しかも盾とはな」
また力の原点といったな。しかも亀の神様を見て解放されていたと。
もしかして俺たちの探している
「やめだ。盾が解放されているなら何をしても無駄だろう」
「ほう、
「だが、
水晶人間が指をパチンと鳴らすと、どでかい門が
全員が見上げて思わず
なんて置き
「お前……!」
文句を言おう思い再び
ヒーローになれない一般人、主人公になる 来栖天明 @tenmei_kurusu
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