第5話 奇跡の魔法?
「傷よ、塞がれっ! 痛いの痛いの飛んでけっ!」
…………。
「全然塞がってないし、痛みも消えてない」
「うう……」
魔毒に侵されたセーヴァを解毒することに成功したニルヴァは、遂に自分にも使える得意な魔法が見つかったと喜んだ。
使用した赤の魔石に蓄えられた魔力が減っていないことにも気付いたが『ぼくは治癒魔法がものすごく得意で、魔石の色がほとんど変わらないくらい少量の魔力しか消費しなかったんだ』と前向きに考えていた。
しかし後日、マナワットの擦り傷を治そうと魔法を試したところ、まったくもって傷を治すことができず、ニルヴァは再び落ち込んだ。
「やっぱり、セーヴァを治した時の魔法は一回きりの奇跡だったのかな……」
「今は、傷を治す魔法だから発動しなかった。解毒の魔法ならまた成功するかも?」
「解毒魔法だけしか使えない人なんて、聞いたことないよ……」
解毒魔法は、治癒魔法の一種だ。
毒は治せて傷は治せないというのは、ニルヴァが今までに教わってきた魔法の仕組みを考えるとありえない。
系統が同じ魔法ならいくつか使えるのが今までの常識であり、魔法の基本的な考え方だ。
「じゃあ、もう一回セーヴァに毒蛇の魔物に噛まれて毒状態になってもらって、ニルヴァが魔法を使う」
「そんなことできるわけないでしょ。もし失敗したら今度こそセーヴァが死んじゃうよ」
「誰が死んじまうってー?」
「セーヴァ!」
ニルヴァがマナワットの無茶ぶりにつっこんでいると、右足に包帯を巻いたセーヴァがやってくる。
魔毒の影響で腫れあがっていたセーヴァの右足は、今はもう左足とほとんど変わらないくらいのサイズに戻っていた。
「ニルヴァの治癒魔法の特訓に付き合っていた」
「でも、マナワットの傷を全然治せなくて……」
「もう一回セーヴァに毒を受けてもらって、それで解毒魔法を試すことにした」
「し、してないよ!」
セーヴァを実験台にしようとするマナワットの話を慌てて否定するニルヴァ。
あまり表情が変わらないマナワットが何を考えているのか、冗談なのか本気なのかたまに分からなくなるニルヴァだった。
「はっはっは! それで俺が死んじまうとか言ってたのか」
「笑い事じゃないよ……セーヴァは本当に死にかけてたんだからね」
「ああ、分かってるよ。今俺が生きてるのはニルのおかげってこともな」
「わっ! ちょ、ちょっとくすぐったいよセーヴァ……っ」
「……わしゃわしゃ」
セーヴァに頭をくしゃくしゃと撫でられて縮こまるニルヴァ。
ニルヴァは気付いていないが、セーヴァに便乗してこっそりマナワットもニルヴァの頭を撫でていた。
「あの時、俺は熱と右足の痛みで朦朧としていたが……ニルの手から白い霧のようなもんが出てきて、俺の体の中から悪い毒を取り出してくれたのが分かった。あんな魔法は初めて見た……もしかしたら、今までにない性質を持った奇跡の魔法なのかもしれないな」
「奇跡の、魔法……」
「奇跡ってのは、そう簡単には起こらないもんだ。普通の解毒魔法では治らず、白の魔石も手に入らない絶望的な状況……ああいうピンチが、ニルの魔法が発動する条件なのかもしれないぜ」
「ええ~……?」
「じゃあ、ニルヴァは当分魔法が使えない」
「そ、そんなぁ~!」
「はっはっは! 冗談冗談! しっかり魔法の特訓に励めよ、少年少女たち!」
そう言い残し、セーヴァは寺院を出て行った。
右足の包帯が取れるまでは、距離が近くて魔物が出現しない初心者向けの遺跡を探索するらしい。
あんな怪我を負っても、トレジャーハンターを挫折しないで続けられるセーヴァはやはりすごいと、ニルヴァは思った。
「ものすごくピンチの時にだけ使える魔法……? そんなの聞いたことないよ」
「ピンチはチャンス。ニルヴァ、わたしがピンチになった時は、奇跡の魔法で助けてね」
「肉体強化ができるマナワットがピンチのときは、ぼくのほうがもっとピンチだよ」
ニルヴァはそう言って少し笑い、治癒魔法の特訓を再開した。
しかし、この時のニルヴァたちは知らなかった……不幸にも彼らの元に再びピンチが訪れ、マナワットに言われたことが現実になってしまうことを。
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