あたたかく、前向きな気持ちになれる作品でした。
舞台は、戦争によって荒廃してしまった町の中。全てを失ってしまった後、少年は瓦礫まみれの土地の中で「不思議な存在」を目にする。
どうやら、種のようなものを蒔いている。何をしているのかと聞くと、「希望と幸せの種」を蒔いているという。
その言葉の通り、夜が明けた後に人々には変化が起きて……。
男の正体は不明だけれど、きっと何かの「良いモノ」なのだろうと感じられる。
どんなに酷い状況に追い込まれても、人々は絶望することなく『復興』という言葉を信じてまた立ち上がる。そんな人間の強さや尊さが感じられ、自然と前向きな気持ちになれました。
そして、そんな人間たちをひそかに応援し、後押ししてくれる存在がいる。世界がそんな優しいものだと感じられることが、何より心をあたたかくしてくれます。
本作を一読した方は、本作で描かれる荒廃した町の様子に、ウクライナやガザを連想するだろう。あるいは、日本の未来の姿を幻視される方もいるかもしれない。
最新のテクノロジーを使用した戦闘の破壊力はすさまじく、町も人も絶望の中に落とされる。その中にあって、人はどう生きたらいいのか。希望を持つにはどうしたらいいのか。
時には考え抜いても、何の効果もないことがある。それならば、希望というものは、あらゆる思考を超えて胸に抱くものなのではないだろうか。
荒廃した世界では、絶望に飲み込まれる。それでも、希望をもって生きるには、理屈を超えて胸に抱くしかない。そういったメッセージを受け取りました。