第4話 出来心。
「咥えたら、吸いながら火つけて。」
動画で一通り知識はあった。
言われるままぎこちなく咥える。
「ゆきのオプションのがいいんじゃん?5ミリだけど」とゆきが差し出してくれたオプションパープル。
咥えるだけでもメンソールを感じれた。
シュッ
…オエ…!ゲホ
むせる。
「最初はそんなもんだよ…舞は吸わないほうがいいんじゃない?」
フーーーっと目を細めて煙を吐き出しながらえみは言う。何本吸えばあんなに手慣れて様になるんだろうか。
ゆきは黙っている。
中学生のときは執拗にタバコを吸おうよと誘ってきたのに
そう言われるとなんか疎外感。
むせずに吸って、凄いじゃんと言われたかった。となぜかここで負けず嫌いも顔を出す。
深呼吸、強く吸いすぎない、肺に入れる…前に動画でみたコツを思い出す。
我ながら馬鹿みたい…と言う気持ちと、吸えるようになりたい気持ちでぐちゃぐちゃ。
「カプセル潰してみたら」とゆき。
「うん…?」ここをこう、とゆきがお手本を見せてくれて、カリッ、と潰す。と同時に紙がヨレッとなってしまった。
ベリー、と言われたら、そうかな?
この日は、1本も最後までは吸えなくて、ニオイが鼻の奥にこびりついてとれなくてこっそりトイレで洗った。
「もうタバコは私には無理」
トイレの手洗い場で、顔半分濡れた滑稽な自分を見ながらぼんやり誓った
ここで終わればよかったのに…
あのカラオケから数日後、わたしのカバンにはタバコポーチなるものが入っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます