飛べない劣等生
参考書が風に吹かれ、めくれる。
目を覚ますと、時刻は20時を指す。外からは笑い声、テレビの音が漏れ聞こえる。暗い部屋の中を、心地よい空気が流れた。10月の秋風は、少しの冷たさと夏の暖かさをまとっている。私の肌を少し泡立てた。
ベッドから起き上がる。
椅子に腰掛け、もう一度ペンを握った。
参考書を自分の手で開く。問題を解き進める。風はサラサラと解いていたのに、私にはさっぱり分からない。また風が吹く。参考書の端が少しめくれ、次の問に進めと言っている。また外へと戻っていく。優等生は、賢く、そして逃げ足が早い。きっと何処へでも飛んで行けるのだろ。
勉強をした先に何があるというのだろう。皆が進む道を目指すことが正しく賢いのだろうか。このページの偉人は、私の人生を左右する程偉いのか。
私には到底わからない。大人はもっと分からないという。誰も答えが出ていないこと自体を、学んでいるというのか。
ページをめくる。
ペンを進める。
彼らは、今度は大きくカーテンを揺らし部屋に入り込む。そして私を包み込み部屋を逃げようとする。何度も何度も入り込む彼ら。弄ばれている感覚になる。肌寒さも強くなる。
私は不意にノートを1ページ破り、紙飛行機を折った。そして彼らに向かい飛ばす。
だか上手く流れに乗ることが出来ず、その場に落ちてしまう。この道はきっと向いていないのだ。
私は落ちた紙飛行機を拾いあげ、窓を閉めた。その途端彼らも閉じ込められ、息を詰める。部屋に落ちてしまったのだ。
出口を塞がれた彼らは私と同じく、もがく。
私が流れを止めるほど偉いのかと思うのだ。
一生懸命に窓を開く方法を考えていれば健気だ。
そしてきっとこの部屋の中で淀み続ける。
彼らも私になる。
私はペンを進める。ページをめくる。偉人が描かれたページの端はわざと折り曲げた。
そこから参考書がめくられることはなかった。
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