魔法の色③
部屋で揉み合いになった結果、男は足を滑らせ後頭部をベッドボードの角にぶつけて倒れた。それからぴくりとも動かない。
……あれ? これって私のせい? 私が抵抗したからこうなったの? あれ? あれ?
頭の中が真っ白になって立ち尽くす私の足元に、男の赤い血が流れてきた。その時私は唐突に美術の先生の言葉を思い出し、近くのホームセンターへと走った。
黒のペンキを両手で持てるだけ買い、男の部屋へと戻った。そしてペンキを男の死体の上にぶっかける。
「黒は魔法の色、だから魔法みたいに消えてしまえ! お前の存在も、私の罪も! 全部全部塗りつぶされて消えてしまえっ!!」
叫びながら"魔法"を夢中で繰り返していると、追加で買って来たペンキもなくなってしまった。なのに──、
「どうして消えてくれないのよ!!」
男の死体は消えない、だから私の罪も消えない。
真っ黒に染まった部屋で私はおいおいと泣き続ける。
死体の前で泣くなんて、まるでお葬式みたい。
《終》
魔法の色 あおじ @03-16
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます