第15話 I'm in love?

風がそよいでいた。

ゆるいウェーブが軽くなびく。

今ここが早朝の外堀通りだと忘れるくらい彼女の周りには寒々しさも、一人の侘しさもない。

ただあるのは透明な空気感と満ち足りた充足感だった。


カップを両手で包み、通りを眺めている。

飲み物の温かさと彼女の中に生まれている心の豊かさまで伝わってくる。

なぜわかるのか?

心の内面までわかるはずもない。

ただ彼女が悲しいのか寂しいのか楽しいのか満ち足りているのか…。

それくらいはわかる。

誰もいないカフェのテーブルで何を取り繕うことがあるのか…。

少なくとも今、彼女がこの時間に一人でくつろぎそれを楽しんでいることは伝わってくる。


自分の時間を大切に扱い、その瞬間をしっかり楽しめる女性。

さらに興味が募る。

思わず声をかけていた。


「何を飲んでいるの?」

顔を上げた彼女は意外にも驚かなかった。

それは俺も同じだった。

彼女に感じる自分でもよくわからない感情。

安心感。

どこかで繋がっていたんじゃないかと思える。

安心感とか繋がっていたとか自分でもよくわからない。

わからないけど、それを今は深く詮索しなくても良いような気がした。


「ロイヤルミルクティよ」

彼女が答える。

嬉しかった。

なぜって、僕が好きな飲み物を彼女も、この満ち足りた時間の中で選んで飲んでいたからだ。

「君も好きなの?」

すると、先日ロイヤルミルクティを美味しそうに飲んでいる人と出会ったからだと言った。


ーー俺のことか?

そう思ったが軽々しく聞きはしない。

ーーそうか

「で、君はその美味しそうなロイヤルミルクティに興味を持ったの?それともその飲んでいた人に興味を持ったの?」

すると彼女は

「両方よ」

と答えた。


ーー両方?

僕の事に興味を持ってくれたのは素直に嬉しいけれど、でもロイヤルミルクティにも興味を持った。

ロイヤルミルクティのどこに興味を持ったのだろう?

「ロイヤルミルクティにも興味を持ったの?それは味?それとも作り方や歴史に?」

彼女は俺を見つめてしばらく何か考えているようだった。

「さあ?確かにここのロイヤルミルクティを飲んで、こんなに奥の深さがあると思わなかった。さらに興味深くなったわ。でも多分ロイヤルミルクティだけではないと思うわ」

そう言って微笑んだ。

品のある優しい微笑みにはぐらかされる。

ーーまあいい。

「そんなに美味しいの?ではロイヤルミルクティ好きとしてはここのロイヤルミルクティを飲まない理由はないね!」

そう言ってスタンドに向い、ロイヤルミルクティを注文した。



to be continue…

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官能と純愛の狭間で shosuke @ceourcrpe

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