第2話
「買ったんじゃなくて、昨日ヒマだったから家で作ったんです。甘かったですか?…砂糖足したのがいけなかったかなぁ」
佐竹さんの言葉を聞くと、俺は「チョコレートに砂糖を足すなよ」と返す。
「そもそもチョコレートには砂糖がふんだんに使われてるんだよ。ビターチョコじゃない限り、砂糖なんて足すなよ」
「ええ~…もしかして、不味かったですか?」
「うん、不味かった」
「っ、ひどーい!!」
しかし、俺が素直に答えた直後、それまで普通のトーンで話していた佐竹さんが、突如大声を上げた。
佐竹さんの突然の大声にバスの車内が一斉に静まり返るから、俺は慌てて佐竹さんに「静かに!」と制する。
しかし、佐竹さんは止まらない。
「人がせっかく先生のことを想って…!ていうか、普通そんなこと言いますか!?先生と私の仲でしょ!?」
「っ…!!」
黙って聞いていたらやがて佐竹さんが周りに誤解されそうなトンデモナイことを言い出すから、俺は彼女の口を慌てて左手で塞いだ。
「ごっ誤解されるから静かにしようね~」
「んーっ!!」
途中、英語担当の木葉先生が「野村先生、何かあったんですか?」と聞かれたが、「佐竹さんが勝手にいろいろ言ってるだけですよ」と返した。
…やべぇ、佐竹さんのせいでヘンな汗が止まらない。
しかし、そう思いながらもやがてその左手を佐竹さんの口から離すと、直後に佐竹さんが言う。
「先生、警戒心たっぷりですね」
「当たり前だろ。っつかお前が変なことを言うから…っ」
「でもその警戒心、これから行く“キャンプ場”にもしっかり向けた方がいいかもしれませんよ?」
「……え?」
佐竹さんがそう言った直後、やがてバスは目的地の「中野宮オートキャンプ場」に到着した。
…しかし。「到着した」かに見えたが…。
「…“松ケ谷オートキャンプ場”…?」
到着した場所は、そもそも名前すら違い、海も何もない大自然に囲まれた場所だった。
…え、俺、もしかして手配間違えたかな。
「…中野宮オートキャンプ場じゃありませんね」
「!」
隣でそう呟く佐竹さんの言葉を聞くと、俺は木葉先生にとりあえず生徒と一緒にバスの中で待機するように告げ、運転手さんに言った。
「…あの、中野宮オートキャンプ場で手配したはずなんですけど…」
しかし俺がそう言うと、バスの運転手が言う。
「名前が変わってるんですよ。ここ、元中野宮オートキャンプ場だから」
「え…そうなんっすか?」
「うん。だからここで間違いないよ」
…バスの運転手さんはそう言うなりバスを降りるけど、ここ、SNSの動画で聞いた説明とだいぶ違うじゃん。
この運転手はわりと高齢だから、たぶん動画の話をしたところで「何それ?」で終わるだろうなぁ…。
俺がそう思っていると、不安そうに木葉先生が言う。
「だ、大丈夫ですか?野村先生…場所…」
…明らかに思っていた場所と違うことに戸惑っているんだろう。
木葉先生も俺と年が2つしか違わないから、SNSの噂話を知っているに違いない。
「だ、大丈夫ですよ。とりあえずキャンプ場の運営の人に僕らの予約がされているか確認してみます」
俺はそう言うと、バスを後にして目の前のキャンプ場受付に向かった。
…やっぱりSNSのあの動画の話は、ただのフィクションだったんだろうか…?
女子高生探偵~中野宮オートキャンプ場の謎~ みららぐ @misamisa21
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女子高生探偵~中野宮オートキャンプ場の謎~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます