第10話

【残酷な世界】



解けた靴紐を結ぶように

2人分け合った日々が交差する

欠けた季節を埋める度に

街の鼓動が抜け落ちる


それはまだ

誰も知らないこと


幼けない君に心は立ち止まる



限りなく美しいと思っていた日々に

残酷なまでの別れを告げる

偶然という言葉のように

物事は寄り添い合っていた



微風が花びらを運ぶ

春風が 躊躇う心を潤す

いつかまたこの場所に来ても

何事も無かった様に

迎え入れてくれるだろうか



水たまりに写る月影を

そっと踏み越えて歩き出す

空と大地の交わるところへ

消えてゆくその後ろ姿



それはまだ

誰も知らないこと


約束の場所で瞳を細める



この一瞬の記憶の後で

吸い込まれてゆく覚悟を思う

広い世界が少しずつ落ちて

季節が静かに離れていくのを

(ただ)黙って見ていた



水と空気は決別を求める

紺碧(こんぺき)の空を制するのは


歪んだ残酷な世界

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