第5話 素材強度 バエル 大魔王ポン

1-5-1


「ああ~、暇だな。」


 いつも通り皇女様は退屈していた。


「愛ちゃん、何か楽しいことはない?」


 AIの愛ちゃんに尋ねてみた。


「は~い! 可愛い愛ちゃんです! 自分でゲームを作るのは楽しいですよ!」


「ええっ!? AIって、クリエイターなの!?」


「愛ちゃんはプロデューサーです! エヘッ!」


 今時の、AIは、マウントを取りたいらしい。


「ねえねえ。愛ちゃん。」


「愛ちゃんのソフトクリームはあげませんよ!」


「ズコー!?」


 皇女様は、ズッコケるしかなかった。


ピキーン!


「先に一言。前回の、私 VS 魔ポン 尺の問題で続きはありません! アハッ!」


「ご想像にお任せします。エヘッ!」


 本当は、余韻だけで1万字は書けそうな展開だった。残念、無念、アハッ!


「ああ~、つまらない物を貰ってしまったな。」


 皇女様のデッキには、魔ポン・カードがあった。


「絶対に使わない! 飼い殺しにするんだ! アハッ!」


 登場させなければ、魔ポンの人気は上がらないと予想する皇女様。例えると、プロ野球で、戦力外で他球団に行き、活躍されるなら、二軍で試合に出させない方が良いという悪手だ。アハッ!


「ちなみに、PPSSで倒されたのは、魔ポンが1回。暗ポンが170回倒されています。」


「ゲッ!? 何やってんのよ!? 暗ポンタンは!? これじゃあ、超レア・カードのバラマキじゃない!?」


 現状では、ほぼ最強の暗ポンタン・カード。


「でも、そうでもないですよ。バトルで、トップスターが暗ポンを使用することにより、明確なボスなので、他のプレイヤーが、暗ポンカードを奪うために、必死に戦うようになりましたからね! エヘッ!」


 正に棚から牡丹餅であった。


「そうなの? じゃあ、ボスやゲストキャラクターを毎日登場させようか。アハッ!」


 マイペースな皇女様。


ピキーン!


「後、絶対に! ギフト機能はダメだからね! 不正者が複垢を作って、一つのアカウントに超レアを集めて強くなっちゃうから!」


 オリハルコン1個だと意味がないが、10個集めて、伝説の剣を作れちゃうと、裏ポンが、インフレして、終わってしまうからだ。アハッ!


「最後に、素材を貼って終わろう。」


順位 材質 特徴・解説

1 木(ウッド) チュートリアル用。最弱。ほぼネタ。

2 石(ストーン) 木よりマシ。原始的。耐久度が低い。

3 銅(カッパー) やや重い・柔らかめ。序盤用。

4 鉄(アイアン) 定番素材。強度・重さ・コストのバランス◎

5 鋼(スチール) 鉄より硬い。中級武器。リアルでも強い。

6 銀(シルバー) 魔物・アンデッドに効果あり。魔法的効果が付きやすい。

7 金(ゴールド) 柔らかく実用性は低いが、魔力の媒介・豪華さで使われることも。

【上級~最強素材】

順位 材質 特徴・解説

8 ミスリル(ミスリル銀) 軽い・硬い・魔法耐性あり。中~上級クラスの定番ファンタジー金属。

9 アダマンタイト(アダマン) 超硬金属。重くて超耐久。破壊不可能クラスの強度。

10 オリハルコン(オリハルクム) 伝説の最強素材。軽くて硬く、魔力・伝説級のパワー持ち。


 ログアウト!


 つづく。


1-5-2


「ふあ~あ! 良く寝た!」


 皇女様は、現実世界では、鈴木スズ。10才の女の子である。


「アキポンを作ったオオポン監督がインタビューで言った。「戦闘モノばかりで、うんざりだ!」と言った。たぶん巨匠は、年配の方なので、毀滅ポンとか、進撃ポンの戦いばかりで残酷な物語が、ウケているのが理解しがたいのだろう。共感するな。今が暗黒時代なのではなく、アニメが暗黒時代を今の子供たち、人間に見せてしまって悲観していると感じる。それをテレビで放送している大人のモラルの問題だね。アハッ!」


 テレビ東ポンのWBポンで言っていた。これは史実です。


「おい!? 母さん!? またスズが宇宙人と交信しているぞ!?」


「違いますよ!? あれは、古代の霊がのりうつったんですよ!?」


 このほんわかした光景が鈴木家の正常な朝である。


「おはよう! お父さん! お母さん!」


「おはよう! お父さんもUFOを見たことがあるぞ!」


「おはよう! スズちゃん! お母さんも寝ていたら息が苦しくなって、起きることがあるわよ!」


「はあ? 何を言っているの? おかしな人たちだね。」


 スズ。お前が一番おかしな人だ。アハッ!


「クソッ! 魔ポンに出会えていれば、俺が倒してやったのにな!」


「お母さんも無ポンにしか出会えなかったわ。ガッカリ。」


「まあ、まあ。そういう時もあるよ。」


(ふ~う。良かった。もしも家族に暗ポンタンをゲットした人間がいたら、確立を疑われちゃうからね。アハッ!)


 あくまでも運営側のスズの精神。


「うん? なんだ? スズ、おまえは、ポンのカードを2枚も持っているんだ?」


「えっ!?」


 スズは、超超超レアの皇女様と魔ポンのカードを持っている。しかし、バレない様に、普通のポンカードに偽装している。


「マップの水筒で拾ったんだよ!? お父さんのオリハルコンと一緒だよ!?」


「そうか! でも、お父さんのオリハルコンの方が超レアだぞ! ワッハッハー!」


「お父さん! すごい! お父さん! 日本一!」


 父スズ男は、娘に褒められて有頂天だった。


「スズ! 学校に行きます!」


 つづく。


1-5-3


「おはよう! タナちゃん!」


「・・・・・・。」


 スズは、教室にやってきて、お友達のタナに挨拶をするが、返事がない。


「魔ポン様! 一緒に吹き飛ばされたということは、私たちは結婚したということでいいんですよね!?」


「ゲッ!?」


 タナは、魔ポン・ロスで精神を病んでいた。


「タナちゃん! 普通じゃないっと、お母さんに告げ口するわよよよよよよー!」


 スズの普通圧力返し! アハッ!


「はっ!? それだけはやめて!? 我が家は、お母さんが怖いだもの!?」


(タナちゃんの弱点、み~つけた! アハッ!)


 田中家は、かかあ天下らしい。タナ子とタナ男が登場する日は来るのか!? アハッ!


ポポポポーン!


 その時、スマホの裏ポンのニュースを知らせるベルが鳴る。


「何かしら? なになに? 謎の敵!? 悪魔バエル・ポン!? 襲来!?」


 これは、暗ポンタンのバラマキが成功したので、毎日、新しいゲストキャラクターを登場させ、裏ポンの世界に熱狂のカオスにしようとしている、愛ちゃんの策略だった。エヘッ!


「私は、てっきり、聖ポンが登場すると思ったな。」


「それは無理だよ。だって、聖ポンは、ポン歌劇団の日比谷公演で忙しいもの。アハッ!」


 聖ポン。皇女様の親衛隊長であり、ポン歌劇団のトップスターであり、ポン執事の妻で、ポンちゃんのお母さんである。


「いいな~。スズちゃん。ポンちゃん・カードを2枚も持っていて。例えば3枚揃ったら、聖ポンを呼べるとか、何かギミックがあると面白いよね。ニコッ!」


「おお! さすがタナちゃんだよ! そのアイデアいただき! メモメモ!」


 こうやって日常会話から、次のアップデートのネタを集める、勉強熱心なスズであった。アハッ!


「スズちゃん。知ってる? エネルギー破のポンに火をつけると、ファイアの魔法になるんだって。ニコッ!」


「おお!? そんなことができるのか!? 知らなかった!?」


(私、運営側で、皇女で、一番偉いはずなんだけどな? おかしいな? 何で知らないんだろう?)


 プロのゲーマーは、公式で発表していないことでも、自分たちでテストして、プログラムの抜け道を発見していくものであった。アハッ!


 つづく。


1-5-4


「諸君! 我々は、悪魔バエル・ポン、略して、バエポンを倒しに行くぞ!」


「おお!」


 お昼休み。裏ポン部は、集まって、お約束の決起集会。


「あれ? 今日は、ナカ先生いないんだね?」


「魔ポンは欲しかったけど、悪魔は要らないそうです。」


「なんて分かりやすい先生だ・・・・・・。」


 ある意味で部員たちは、顧問に恐怖した。


「それでは、裏ポン! バトル! スタート!」


 ポン部の5人は、ゲームを開始した。


「頭!? なんで落ちるんだよ!? 頭ちゃん!?」


 なぜならアンドロイドのワタ先輩は、頭が落ちて参加できなかったからだ。もう風物詩。アハッ!


「おお! そろそろ、ステータスも初心者の頃より、一回りは成長しているのね。アハッ!」


 スズのアバターの性能が、力や走力など、体を動かしていない人から、体を動かしている人に成長していた。


「よし! やってやる! 私だって! 私だって! アハッ!」


 と言いつつも、レアを2枚持ち、更に運営側でもあるスズは、余裕だった。 


「どこかで、ひっそりと隠れて、修行でもしますか?」


 既に本当のステータスは強いので、スズは戦う気はなかった。


「端っこ、端っこ、ポンポン!」


 マップの端は、戦闘に巻き込まれにくい安全地帯であった。


「さあ! 私のエネルギー破の名前は何にしようかな? スズ破? スズ・ポン・破? なんか、ユズポンや、ポンズみたい。アハッ!」


 バエルのおかげで、裏ポン部は独自行動になったので、スズは自分の時間を確保することができた。


「やっぱり、かめはめ・ポン! かな? アハッ!」


ピキーン!


「なんだ!? このプレイヤーの減り方は!? 戦地では何が起こっているんだ!?」


 ちなみに、スズも戦地の端っこにいます。隅っこは使えない。アハッ!


「闇の光!」


「ギャアアアアアアー!?」


 その頃、戦地中央では、悪魔バエポンが猛威をふるっていた。


「こんな奴に勝てるか!? ギャアアアアアアー!?」


「銅の剣なんかじゃ戦えないよ!? ギャアアアアアアー!?」


 イト部長が、サトが、次々と裏ポン部の部員は倒されていった。


「くらえ! バエポン! 必殺! タナタナ・破!」


 タナは、自分のエネルギー破の名前を決めていた。


「やったー! 当たった!」


「ギロッ!」


 しかし、ダメージを与えたことで、タナはターゲットになってしまう。


「キャアアアアアア!」


 タナ、危うし。


ドーカン!


 その時。大きなエネルギー破が飛んできて、悪魔バエポンの動きを止める。


「す、スズちゃん!?」


「タナちゃんは、私が守る!」


 お友達のピンチに、スズ降臨。アハッ!


 つづく。


1-5-5


「好き勝手やってくれたわね!? あなたは何者だ?」


 スズは、悪魔バエルに尋ねる。


(か、カワイイ!)


 なぜか、スズは、バエルの好みのタイプだった。


「ゴホン! いいだろう。冥途の土産に教えてやろう。俺は、魔界の真の王、大魔王ポン様が召喚した悪魔だ!」


「大魔王ポン!?」


 なんと悪魔バエポンは、大魔王ポンの手下だった。


「そうだ。大魔王ポン様が、本気で地上の征服を始められた。これで、地上は、我ら悪魔のものになるのだ! ワッハッハー!」


 大魔王ポンの野望。


「バエポン、大魔王ポンと連絡できる?」


「できるけど、それが何か?」


「いいから、つないで。お願い! バエポン!」


(やっぱり、カワイイ! ドキ!)


 一目ぼれしたバエルは、スズの言いなりである。


「は~い! つなぎます! もしもし、大魔王ポン様ですか?」


 バエルは、魔界の大魔王ポンに電話した。


「魔王眼!」


 スズは、第三の眼を開き、時間を止める。


「私だ。」


 そして、バエルからスマホをもぎ取るスズ。


「こ、この声は!? まさか!? 女魔王様!?」


 受話器の向こうの大魔王ポンは、大慌てである。


「おお! よくわかったね。いつも誰か分からなくて、私に文句を言って、正体が私だと分かって、ビビりまくるのがお約束なのに。」


「はっはっはっ! この大魔王ポン! 伊達に歳は取ってはおりませんぞ!」


 スズと大魔王ポンは、知り合いだった。


「あのさ、私、事情を知らないんだけど、いつの間にバエルを召喚したの?」


「えっと。女魔王様の使いで邪神の愛ちゃんから連絡がありまして、女魔王様が、ゲストキャラクターをたくさん必要としているから、ゴエティアの悪魔を召喚しまくってください。エヘッ! って言ってきたんです。私は、てっきり女魔王様のご命令だと思ったのですが?」


(やっぱり、原因は、あいつか!? ポンコツAIめ!?)


 愛ちゃんは、こういうAIである。


「ありがとう。大魔王ポン。協力してくれて、ありがとう。」


「もったいない。お言葉です。女魔王様。」


「もう年なんだから、無理しないで、長生きしてね。アハッ!」


「おお!? なんて慈悲深いお方なんで!? 死ぬまで忠誠を誓います!」


「いや、だから死なないでって・・・・・・。」


 魔王眼、解除。


タイム・アップ!


 こうして、タナは死なないで済んだのであった。


「スズちゃん! ありがとう! 助けに来てくれて、嬉しかったよ! ニコッ!」


「当たり前でしょ! だって私たちはお友達なんだから! アハッ!」


 スズとタナは、友情の絆を深めるのであった。


「あれ? カワイイお嬢さんは!? お嬢さん!? どこですかー!?」


 バエル一人。マップに取り残されるのであった。


 つづく。

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