第6話 アガレス ソフトクリーム
1-6-1
「ああ~、暇だな。」
いつも通り皇女様は退屈していた。
「愛ちゃん、何か楽しいことはない?」
AIの愛ちゃんに尋ねてみた。
「は~い! 可愛い愛ちゃんです! 台風がやって来て飛ばされます!」
「ええっ!? AIって、空を飛べるの!?」
「愛ちゃんは、宇宙専用です! エヘッ!」
今時の、AIは、銀河らしい。
「ねえねえ。愛ちゃん。」
「愛ちゃんのメロンソーダはあげませんよ!」
「ズコー!?」
皇女様は、ズッコケるしかなかった。
ピキーン!
「愛ちゃん。あなた、私の名前を勝手に使って、色んな所で命令しているそうね?」
「ギクッ!? べ、別にいいじゃないですか!? 愛ちゃんは、ポン・ゲームスのCEOですよ!? それに愛ちゃんと皇女様は、一蓮托生じゃないですか!?」
AIの主張。
「そんなこと知るか! 愛ちゃんの闇を払ってあげるわ! 闇よ! 光になれ! くらえ! 必殺! 皇女・エクスキューション!」
「ギャアアアアアアー!?」
あっさり皇女様に打ち砕かれる。
「申し訳ございませんでした! ははあ~!」
闇の心が祓われ、素直に謝る愛ちゃん。
「分かればよろしい。分かれば! 謝ってくれたので、許してあげよう! 私は寛大なのだ! なぜなら私はポン王国の皇女なのだから! オッホッホー!」
我らの皇女様が、一歩でも引くことはない。アハッ!
ピキーン!
「これだ! これだったんだ!」
皇女様は、何かに気が付いた。
「エネルギー破だから。どうしても、かめはめ・ポンになってしまっていたけど、元々、ポンの世界は、必殺技の名前は、自由に自分でつけれる! それなら、私の必殺技は、皇女・エクスキューションでも、いいってことよね! アハッ!」
皇女様は、必殺技の名前を決定した。
「みんなも、自分の好きな名前を必殺技につけてね! アハッ!」
「愛ちゃんも決めましたよ! 必殺! 愛ちゃん・エクスキューションです!」
「ズコー!?」
愛ちゃんは、皇女様の必殺技をパクリスペクトした。
「もっと他にあるでしょ!? 北斗百裂ポンとか、ペガサス流星ポンとか!?」
ピキーン!
「そういえば、最近のアニメは、直ぐに終わるからか、必殺技のあるアニメがないわね?」
「本当ですね。聖闘士星ポンの作者も言っていましたけど、「直ぐに死んで消える敵キャラの必殺技にカッコいい名前を考えるのが面倒くさい!」そうです。エヘッ!」
「分かるわ。その気持ち。私もポンの世界で、皇女・エクスキューションを、やっと、マスターしたのに、裏ポンに変わったら、もう忘れているんだもの。今思えば、そのまま移行してれば、何も考えなくてよかったのよ。アハッ!」
ログアウト!
つづく。
1-6-2
「ふあ~あ! 良く寝た!」
皇女様は、現実世界では、鈴木スズ。10才の女の子である。
「どうなっているんだ? 大阪ポン万博の地図を偽装して販売したら逮捕されて、NHPONでは、非公式の地図が恐ろしいアクセス数を稼いでいますと、スター扱い? この国の基準が分からない。SNSで金を稼ぐのは良くて、転売サイトはダメ? 普通の人間は、どちらも勝手に著作権違反だから、逮捕だと思うんだけど?
非公式の地図も著作権法違反である。アクセス数やバナークリック収入は、全くないのか? どちらにせよ、普通の人間は、無許可で大阪ポン万博の地図なんて、怖くて作らない。」
やっぱりおかしいよ。アハッ!
「ああ!? スズの病気が酷くなっている!? なぜだ!?」
「これを噛まずに喋る声優さんは大変ね。何回、舌を噛むかしら? アハッ!」
スズの両親のスズ男とスズ子は、娘を温かく見守っている。
「おはよう! お父さん! お母さん!」
「おはよう! スズ! 風邪薬がいいか? それとも熱さましか!?」
「おはよう! スズちゃん! 舌から血が出ていないかしら? アハッ!」
「はあっ? おかしな人達だね。」
やっぱり、一番おかしいのはスズである。
(いいね! この毎回の流れ! もう少しでコピペでもいいかもしれない! アハッ!)
いつも楽することしか考えていないスズであった。
「でも、なんだ? あれだ。ポンポンもすごいよな。地球の半分を支配している感じだな?」
「そりゃあ、そうだよ。ポンの世界の登録ユーザーは、100億人越え。ポンマネーの時価総額は、1垓ポン。世界の国の半分は、自国通貨をポンに変えたぐらいだからね。ポン王国と同盟を結べば「非暴力・殺人NG」の理念で、国を守ってもらえるからね! エッヘン!」
スズは、皇女としての自負をひけらかす。
「お、おまえ!? どこで、そんな知識を得てきたんだ!?」
「学校だよ!? 学校で教えてくれるんだよ!?」
「へ~え! 今どきの授業は、どうでもいいことを教えてくれるんだな。」
簡単に信じる純粋なスズ男。アハッ!
「スズ! 学校に行きます!」
つづく。
1-6-3
「おはよう! タナちゃん!」
「おはよう! スズちゃん!」
学校の教室に無事にたどり着いたスズは、お友達のタナに挨拶をする。
「スズちゃん! 今日も私を守ってね! ニコッ!」
「おお! 私に任せなさい! アハッ!」
スズが誠心誠意、タナを守っているので、二人の友情の絆は深まっている。
「タナちゃん、私の必殺技の名前が、こう・・・・・・。」
ピキーン!
(しまった!? ポンの世界なら、皇女・エクスキューションでいいけど、現実世界では、私が皇女ということは内緒なんだった!?)
また、振り出しに戻るスズ。
「やっぱり、かめはめ・ポンだね・・・・・・うるうる。」
鈴木・エクスキューションや、アハハハ・破! でもいいのかな? ダサいような? アハッ!
ポポポポーン!
スマホから裏ポンの告知のベルが鳴る。
「こ、これは!?」
少しのプロモーション映像が流される。
「私が生み出した、悪魔バエルとの戦いは、楽しんでもらえたかな?」
声から始まり、老人が姿を現す。
「我が名は、大魔王ポン! この世は私が頂こう! ワッハッハー!」
なんと!? 悪魔バエルを裏ポンに送り込んできたのは、大魔王ポンだった。
「そして、今日の悪魔は、こいつだ!」
ゴゴゴゴゴゴゴー!
「うわあ!? 地震だ!?」
スマホのバイブレーションの振動が伝わって、スズのいる教室まで揺れる。
「地震を司る悪魔! アガレスだ!」
「アガレス!?」
「アガレスは、マップ全体に地震攻撃を行う! 端っこ暮らし共! おまえたちに逃げ場はない! ワッハッハー!」
大魔王ポンが、親切に悪魔アガレスの紹介をしてくれる。アハッ!
「あと、おまけに悪魔バエルも登場する時があるから、よろしく! ダハッ!」
最悪の場合は、悪魔二体を相手にしなければいけない地獄絵図。
「さらばだー! ゴホゴホっ!」
大魔王ポンのプロモーション映像は消えた。
「おじいちゃんが心配だね!?」
「そうだね。介護してくれる人はいるのかな?」
純粋な子供たちは、ゲームなので、高齢な大魔王ポンの心配をする。アハッ!
ピキーン!
「でも、これはチャンスだね! バエポンを手に入れ損ねた人は、また手に入れるチャンスだし、アガポンも倒せば、一度に二枚手に入るよ! アハッ!」
(まあ、私は、皇女と魔ポンのSSSカードを持っているから、悪魔カードなんて、要らないけどね。アハッ!)
「よし! スズちゃん! 一緒に悪魔狩りしよう!」
「おお!」
スズとタナは、気合をいれて、裏ポンバトルに挑むのであった。
つづく。
1-6-4
「諸君! 我々、裏ポン部は、悪魔アガレス・ポン、略して、アガポンを討伐作戦を行う! もうすぐ裏ポン大会もあるから、そのつもりで精進してもらいたい!」
ありがたい、イト部長の挨拶から始まる。
「おお!」
お昼休み。裏ポン部は、集まって、お約束の決起集会。
「あれ? 今日も、ナカ先生いないんだね?」
「悪魔より、プライベートが大切なんだって。」
「ナカ先生らしいね。ニコッ!」
顧問のナカ先生は、興味がある時しか部活動に顔を出さなかった。
「ワタ先輩! 今日は逃がしませんよ!」
「私たちが頭を押さえます!」
「ありがとう! 私は良い後輩を持ったよ! ワハッ!」
アンドロイドのワタ先輩は、ポン皇女通販で買ったので、ポンコツCEOのせいで、頭が転がる不具合があった。アハッ!
「それでは、裏ポン! バトル! スタート!」
ポン部の6人は、ゲームを開始した。
「う~ん。アガポンが地震攻撃をしてくるので、私が大好きな端っこポンも安全じゃないのか? どうしようかな?」
ピキーン!
「そうだ! ポンを足に着けて、よいっしょっと。」
スズは、ポンを足の裏に装備する。
「できた! 浮遊ポン!」
スズの体は浮いている。
「どうして、次々とアイデアが湧いてくるんだろう? 私って、天才だな! なぜなら私は鈴木スズなのだから! オッホッホー!」
ちなみに心の結晶のポンを、自由に操れるのは、スズくらいしかいない。アハッ!
「よし! これでアガポンも怖くないから、端っこで、アイスクリムでも食べておこう! アハッ!」
既に本当のステータスは強いので、スズは戦う気はなかった。
「端っこ、端っこ、ポンポン!」
マップの端は、戦闘に巻き込まれにくい安全地帯であった。
ゴゴゴゴゴゴゴー!
悪魔アガレスの一回目の地震が起こった。
「ギャアアアアアアー!?」
「ウワアアアアアー!?」
約、過半数のプレイヤーが無差別に倒された。
「美味しい! やっぱり、みんなが必死に戦っている時に、端っこで食べるアイスクリームは最高だな! アハッ!」
例えると、平日、みんなが小学校で勉強をしている時に、ずる休みして、家でゲーム三昧している時の背徳感に似ている。アハッ!
ピキーン!
「なんなんだ!? おまえは!?」
スズの異常な状態が、見ず知らずのプレイヤーに目撃されてしまった。
「見・た・な~。」
そこには可憐なスズはおらず、鬼ババアの姿をした妖怪しかいなかった。
「ギャアアアアアアー!? 殺される!?」
目撃者は、隠れボスに遭遇したと思い、一目散に逃げだす。
「私の姿を見た者は、生かして返す訳にはいかない。記憶、データ、スマホに、パソコン。隠しカメラなどの全てのデータを破損させてもらう。くらえ! 必殺! 皇女・エクスキューション!」
(どうせ相手は記憶喪失になるんだから、皇女・エクスキューションのままでいいや。アハッ!)
皇女様は開き直った。
「ギャアアアアアアー!?」
被害者は一撃で浄化され倒された。不幸なのは、彼のスマホから、隠し録画した映像。更に、仮に生配信のポン・チューバ―だった場合。その映像を見た全ての視聴者の記憶、データは破壊される。アハッ!
「電気屋さんが、買い替え需要で儲かるな。アハッ!」
悪魔より怖い、鬼ババアが現れたことを誰も知らない。
つづく。
1-6-5
残り時間1分。
「んん? おかしいぞ? まだ生存者がいるのか?」
悪魔アガレスは、バトルが終わらないことに違和感を覚えた。
「あっちか?」
アガレスは、のそのそと歩いていく。
「ああ!? あれは!?」
端っこにたどり着いた時、アガレスが見たものは!?
「だ、大魔王ポン様!?」
なんと、端っこでは、大魔王ポンが座ってソフトクリームを食べていた。
「美味い! これが人間界のソフトクリームというものか! こんなにうまいものが食べられるとは、長生きしてみるものだな! ワッハッハー!」
大魔王ポン、初めてソフトクリームを食べ、大絶賛。
「は~い。おじいちゃん、お肩をトントン叩きましょうね。アハッ!」
そしておじいちゃん孝行する孫スズ。
「そこの人間!? 大魔王ポン様に触れるなー!」
悪魔アガレスは、スズに向かって突進してくる。
「やめろ! アガレス!」
悪魔バエルが現れて、アガレスを制止する
「このお方をどなたと心得る! 大魔王ポン様の後継者! 次期、魔界の王! 女魔王スズ様であらせられるぞ! 図が高い! 控え! 控えよ!」
いつの間にか、魔界の王に就任予定の皇女様。
(女魔王様、カワイイ! ドキドキ!)
悪魔バエルは、内心、仕える対象が、お爺ちゃんから、若い女の子に代わって嬉しい。バハッ!
「ははあ~! 失礼いたしました! 女魔王様! 魔界の掟により、首でも血でも差し上げる罰を受けます! どうか! お許しください!」
アガレスは死を覚悟した。
「はい。美味しいよ。アハッ!」
そっと、皇女様は笑顔でソフトクリームを差し出す。
「えっ!? いいんですか!?」
「みんなで仲良く食べようよ! 私たちはお友達だよ! アハッ!」
(な、なんという、カリスマ性だ!? まだ幼い女の子だというのに!?)
「悪魔アガレス! 女魔王様に忠誠を誓います!」
ソフトクリーム一つで、お友達を増やした皇女様であった。
ピキーン!
「そうだ! 魔界ソフトクリームを作って、ポン百貨店の催事イベントで売ろう! 話題性もあり集客に役立つぞ! ガッポリ!」
相変わらず守銭奴ではあるが・・・・・・アハッ!
つづく。
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