第23話 推しを愛している限り、オタクは皆平等だ

「お友だちのみんなー! プニキュアを応援してくれてーーー、どうもありがとーーーーー!!!」


 司会のお姉さんの呼びかけに、客席の子どもたちから大きな歓声が上がる。

 臨場感すごかったなぁ……。敵に捕まった司会のお姉さんを助けるため、変身したプニキュア戦士たち。ステージから客席近くまで、会場全体をフルに使ったバトルシーンが迫力満点で、最初から最後まで見入ってしまった。


 石川あみさんのミニライブまで少し準備があるようなので、俺は一度、ペットボトルの水で乾いた喉を潤す。


「いやぁ、最近のショーはクオリティが高いねぇ」

「わかる。顔とか等身とか、昔よりめっちゃリアルだもん」

「しかもダンス凄くない!? サビ前のあの動きって三次元で再現できるんだ……!」

「ほんっとそれ。やばかった」


 ダンスが高レベルなのはもちろん、サビの振り付けはプニキュアがレクチャーしてくれたので、子どもたちも楽しそうに踊っていた。本当に素敵なショーだったと思う。


「あぁ、やっぱ推しの話は楽しいわ」


 真夏はペットボトルの生茶をごくごく飲み干すと、「あ゛ー」と声を上げ、キャップを閉めながら俺に尋ねた。


「……天宮ってさ。自分がオタクなこと、周りに隠したりする?」

「急にどうしたの?」

「なんとなく。どうなのかなーって」

「そう、だな」

 

 中学生の頃は、まだプニキュアを観ている自分が、なんとなく恥ずかしくて……いのりにオタクをバラされた時、人生が終わったかと思った。

 けど実際には、何が変わることもなかった。そもそも周りは、俺の趣味嗜好なんて興味もない。そんな現実を知り、俺もいつしか、隠すのが馬鹿らしくなっていた。


「……特に隠してもいないかな」

「いいなぁ、私は隠しちゃうから……天宮を見てると、たまに羨ましくなる」


 真夏は残念そうに、足元に視線を落とす。

 隠す必要ないのに──なんて、俺に言う権利はない。だって俺と真夏じゃ、置かれた立場が全然違うから。には、学校中が興味を抱いているのだ。オタバレしても何も変わらないなんて、俺が無責任に言うことはできない。


「隠したままで良いと思うけどな。誰かに理解してもらうために、推しを愛しているわけじゃないし」

「まあ、そうだけどさ。隠してるのって、なんか疚しい感じじゃん? 私はただ純粋に、好きなものを推してるだけなのに」

「別にそれだけで十分だろ。推しを愛している限り、オタクは皆平等だ」

「ふふっ、何それ。変なの」


 真夏は小さく笑いながら、2本目の生茶を取り出す。

 そしてキャップを開け、口を付けたところで、司会のお姉さんが再びステージに帰ってきた。


「お待たせしましたー! 次はいよいよ! プニキュアのopテーマを歌ってくれている、あみおねーさんが来てくれるよーーー!!! みんなで一緒に、あみお姉さんを呼んでみよーーーーーう!!! せーのっ!!!!!」

「「「あみおねーーーさーーーーーん!!!!!」」」


 小さなお友だちに合わせ、俺たちも心の中で、あみお姉さんの名前を叫んでいた。



「圧倒的美声」

「それ」


 他に言葉が出ない。ミニライブが終わってから、俺も真夏もしばらく放心状態だった。

 最初の1音でもう、石川あみの世界に引き込まれてしまう。その声は力強くも可愛らしくて、会場全体が彼女に魅了されていた。プロの歌手って本当にすごい。


「こんな神ライブ、無料で聴いたら罰が当たるでしょ!?」

「まさか5曲も歌ってくれるなんてね……アンコールまで答えてくれたし」

「ほんっっとそれ!!! やばすぎる」


 もはや申し訳なさすら覚えている。物販でCDだけは買わせていただいたけど、それはそれとして、投げ銭もしないと気が済まない。


「いやー、興奮冷めやらぬって感じだねー」

「だな」

「せっかくだからさ、観覧車で話の続きしない?」

「観覧車で?」

「ほら、今日は天気も良いし」


 そういえば乗りたがってたっけ。

 たしかにこの天気なら、景色もよく見えそうだ。


「……他にも、天宮と話したいことあるし」

「あ、うん。いいけど」


 真夏の意味深な物言いに、俺は少しひっかかりを感じていた。

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