第21話 さすがは我がオタ友!!!

’’おい天宮! どういうことか説明しろよ,,

’’だから別に何もないって,,

’’何もないやつが女子4人に囲まれてプリクラ撮れるかよ!!! いったいいくら金を積んだんだよ???,,


 ……中村には今日の出来事を伏せておくはずだったのに。どうやら真夏がプリクラをインスタに上げたらしい。おかげで中村にも知れてしまい、さっきからLINEの通知が鳴りやまない。

 まあ、真夏が陽側であることを失念した俺の失態なのだが、それはそれとして、中村がインスタをやっているという事実が鼻について仕方がない。お前はこっち側だろ。


’’なんかそういう流れだったんだよ。割り勘したプリクラ代の100円以外、別に金は払っていない,,

’’嘘をつけ。俺たちの周りにそんな流れは存在しない,,


 うん、これに関しては中村が正しい。本来陰キャの世界にこんな流れは存在しない。

 でも幸か不幸か、これが現実なのだ。


’’てか天宮って、海原さんと面識あったわけ?,,

’’面識というか、廊下を走って説教されたことはある,,

’’あー、真面目な人だからな。良くも悪くも,,


 ……知り合いみたいな書き方が妙に引っかかる。中村が女性の外見以外に触れること自体が珍しいし。


’’中村は海原さんと接点あるの?,,

’’おう。中学で同じ水泳部だったからな,,

’’へー,,


 意外な接点だ。海原さんも水泳やってたんだ。


’’フォームがめちゃくちゃ綺麗でさ、それでいて、女子なのに俺と同じくらい速いんだよ,,

’’すごいな,,

’’3年生が引退した後は部長もしてたんだけど。他の女子部員と上手く行かなくて。結局、最後の大会前に辞めちゃったんだよな,,

’’そうだったのか,,

’’でも俺、海原さんのぶれないとこ、まじでかっこいいと思うんだよ,,


 中村にしては珍しく真面目な発言。こいつにも人を尊敬する気持ちとかあったのか……少し見直した。スポーツに対しては意外と真摯なのかも。


’’まあとにかく。次からそういう素敵なイベントには、ちゃんと俺を誘えよ,,

’’早く寝ろ,,


 ……こいつを一瞬でも見直した俺が馬鹿だった。

 俺は中村のLINE通知をオフにし、音楽アプリを開く。そしてプニキュアの推し曲を集めたプレイリストを選択すると──突然、スマホが通話画面切り替わり、涼川真夏という名前が表示された。

 俺は恐る恐る、左下の緑のボタンを押す。

 

『あっ、もしもし天宮?』

「も、もしもし」

『今時間あるかな?』

「う、うん」


 友だちから電話なんて初めてだ。というかLINEって通話機能あったのか。

 ……自分の部屋で、クラスメイトの女子の声を聞くって、なんかドキドキする。


「どうしたの?」

『土曜日のクリーンランドのプニキュアショーってさ、天宮も行く?』

「もちろん!」


 クリーンランドはこの辺だと一番大きな遊園地で、定期的に子供向けのヒーローショーもやっている。

 だが今回はゲストになんと! 今期のop主題歌を歌ってる石川あみさんが来てくれるのだ……!!! しかも入園料さえ払えば観覧無料。こんな神イベント、行かないという選択肢はない。


『石川さんのミニLIVEが無料ってやばいよね!?』

「ほんっとそれ! 俺、これから石川さんの曲鬼リピしようとしてた」

『さすがは我がオタ友!!! 失礼の無いよう、私も聴き込んでおかないと』


 昼間の気まずさとは打って変わり、おもしろいように会話が弾む。

 ……プニキュアの話をしている時は、余計なこと考えずに済むのにな。


『てことでもちろん私も行く予定だからさ。せっかくだし現地で待ち合わせしない?』

「……えっ」

『ほら。せっかく入園料払って入るのに、プニキュアのイベントだけ観て帰るのももったいないじゃん!」

「まあ……たしかに」

『どうせ同じイベント行くんだからさ。一緒にアトラクションも乗ってから帰ろうよ』


 ……それは普通にデートじゃん、客観的に。

 けど遊園地なんて1人より2人の方が絶対楽しいし、どうせ同じ日に行くなら、合流するのが良いに決まってる。どうやっても、断る理由が浮かばなかった。


「まあ、いいけど」

『やった! じゃあ当日はよろしくね』

「う、うん。よろしく」


 そうしてピロンと通話が切れる。……気が重い。


 

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