第4話


○沖野家


一樹:ということで、雪菜さんを家においてほしいんだけど

父:話は分かった。広瀬さん、こんな家でよければずっといてくれ

夕実:雪菜お姉ちゃんと一緒? 一緒、一緒、うれしいね、ララ

猫:にゃー

母:あらあら、雪菜ちゃん、こんなに体、冷えちゃって。お風呂用意してあるから、入ってらっしゃい

雪菜:え、でも

母:一人暮らしだなんて、怖かったでしょう? もう大丈夫よ。変な人なんてウチの人が撃退してくれるから、ね? アナタ

父:ああ、もちろんだ

雪菜:あの、私もう大学生ですから

父:大学生でも子供は子供だ。君らを守るのが大人で、俺の仕事だ

雪菜:……沖野さん

父:ん?

一樹:はい?

父:……一樹、今、広瀬さんはパパに言ったんだよ?

一樹:父さん、自意識過剰じゃない? 雪菜さんは僕に声かけたんだよ?

母:あらあら、沖野さんじゃ分かりにくいわね。一樹のことは名前で呼んであげて

雪菜:一樹くん、ですか?

一樹:あ、うーん、はは

雪菜:なんです?

一樹:照れくさいけど嬉しいですね。名前で呼んでもらうの

雪菜:っ!

母:あらあら、二人とも、林檎みたいなほっぺ。ね、ララ?

猫:にゃー


○リビング


 一樹は風呂上りで、髪を拭きながらリビングに入ってくる


一樹:っはー、さっぱりした。 雪菜さん?

雪菜:あ、おき……一樹くん

一樹:どうしたんですか?

雪菜:いや、その

一樹:眠れないですか?

雪菜:……ごめんなさい

一樹:謝らないでくださいよ。僕も枕変わると寝付けないタイプなんです

雪菜:こんなに人がいるところで寝るの、久しぶりで

一樹:雪菜さん、家族は?

雪菜:……私、孤児だから、両親の事知らないの

一樹:……そっか

 

 一樹は冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに入れる


雪菜:一樹くん?

一樹:一分半くらいかなぁ


 一樹は電子レンジでミルクを温める


一樹:ねぇ、雪菜さん、僕の将来の夢、なにか知ってます?

雪菜:え? 知らないけど

一樹:僕ね、絵本作家になりたいんです

雪菜:絵本作家?

一樹:似合わないって思うでしょ?

雪菜:うん

一樹:(苦笑)正直ですね

雪菜:あ、ごめんなさい

一樹:いいんですよ、自分でも似合わないなって思ってますから


 電子レンジが鳴る


一樹:あ、できた


 電子レンジからホットミルクを出して雪菜の前におく


一樹:はい、雪菜さん

雪菜:え?

一樹:ホットミルク。熱いかもだから気をつけて――あ、ちょっと待って、たしかここらへんに蜂蜜が、あった。蜂蜜を入れて。はい、ハニーミルクの完成!

雪菜:これ

一樹:体が温まれば眠れますよ

雪菜:……ありがとう。私ね、孤児院にいて、ずっと引き取り手がいなかったの。だから、自分の事、自分でしなきゃいけないって思ってたの。なんでも自分でできなきゃって

一樹:うん

雪菜:ストーカーのことも、自分でどうにかしないとって、でも

一樹:でも?

雪菜:……こ、わかったの

一樹:うん

雪菜:怖いの

一樹:うん。じゃあ怖くなくなるためにはどうしたらいいかな

雪菜:……分からない

一樹:ねぇ、雪菜さん。僕が傍にいるの怖いですか?

雪菜:一樹くんは怖くない

一樹:なら、怖くなったら僕のところにおいで。電話番号もメールも交換しよ? なにかあったら、僕に連絡して

雪菜:どうして?

一樹:僕がそうしてほしいから

雪菜:……うん

一樹:? 雪菜さん、眠い?

雪菜:うん

一樹:そっか。じゃあほら、ベッドに行こう


 雪菜はベッド寝る


一樹:よく眠れるといいね

雪菜:一樹くん

一樹:ん?

雪菜:一樹くん

一樹:なに、雪菜さん


 雪菜は一樹の手を握りしめる


雪菜:かずき、く

一樹:大丈夫、怖い夢なんて見ないから

雪菜:うん

一樹:寝ちゃった。はは、腕、掴まれたままだ。……お休み、雪菜さん

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