第4話 異世界最初の博打はカップ&コイン
ヘブンズドア、天国の扉か…確かにアリスの言ったように
決して大きな賭場では無いが、このあたりで一番盛況で、行列も出来ている。
「キョウスケ、あれが私たちが挑戦する。博打、カップ&コインだ」
見ると、テーブルの上には三つのコップと一枚のコイン。それに頭に角がある大柄な男が奥に座っている。オーガという種族らしいが、すごい迫力だ。
アリスから作戦ついでに説明をしてもらったが、一目でだいたいどんなギャンブルか予想はついた。コイン当てゲームの一種だが、実に単純だ。要は3つのカップの中から1つを選んで、その中にコインを入れてカップをシャッフルしてどこに入っているか当てるということだろう。そんな単純なゲームだが、客は盛り上がっており、銀貨や銅貨が賭けられている。
オーガの店主が、その巨体に似合わないスピードでコップをシャッフルして場を盛り上げている。しかし、その最中に大きな黒い布でコップに目隠しをして、客に分からないようにしている。まぁそれはそうだろう、なにも隠さないままだったら、さすがにこの人数全員の目を眩ませるのは困難だ。そうして、何回かゲームが終わり、客も勝ったり負けたりを繰り返している。
アリス曰く、ここは見で最後の勝負に作戦を実行するということだ。
オーガがその巨体にふさわしい大きな声で客に告げる。
「さぁ、本日最後の大一番、倍率は3倍だ、さらに儲けたいやつ、負けを取り返したいやつ、特別に上限は無しだ。どんどん賭けてくれ。」
横にいたアリスは俺に小声で
「キョウスケ、金を預けてくれ、例の作戦通りに頼む」
そう言い残すと俺の布袋を手にテーブルの方に走っていった。
しばらくすると、オーガの店主のシャッフルが始まり、例のように目隠しが施され、もうコインがどこにあるか判別は出来ないがテーブルの最前線に陣取っていたアリスは目を皿のようにしてカップを凝視している。そうこうしているうちにシャッフルが収まった。
「さぁジャンジャン賭けてくれ」オーガが言う刹那に俺は懐に隠していた風船に針を突き立てた。パァン!という破裂音と共に、皆の視線が一斉にこちらを向く。
その一瞬をついてアリスがカップの中身を確認する。これがアリスの言う作戦だった。あまりに単純な作戦だったが、風船の音も外の子供のものだろうと皆が思ったらしく、賭けは続行された。
アリスは満面の笑みを浮かべて、真ん中のカップに俺の布袋を賭けた。オーガは驚いた顔をして
「お嬢ちゃん、こんな大金とは・・大丈夫かい」と話しかけたが
アリスは
「それより、当たったら三倍。本当に払えるだろうね」と強気な台詞だ
「もちろん、当たったら払ってやるが、そううまくいくかな」
「脅して、変えさせようとしても無駄だよ、さっさとカップを開けてみて」
オーガーは静々と右のカップを開けた。もちろん入ってない。その次はいよいよ真ん中だ。みんなの目がカップに注がれる。そしてカップが開けられると、そこには何も入ってはいなかった…
何故…アリスは時間が止まったように硬直していたが、すぐにオーガに食ってかかる
「イカサマだ!!本当はどのカップにもコインなんか入ってなかったんだろう」
怒りの表情でオーガを睨みつける。
オーガは余裕の表情で
「お嬢ちゃん、大負けしたからってイカサマ呼ばわりはいけねぇな。なんなら左のコップを自分で開けてみるかい。」
アリスはオーガに促されて、震える手で左のコップを開けると、中には一枚のコインが入っていた…
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