第3話 大博打の前に

「さぁ兄さん、それじゃあ、勝負の前に腹ごしらえだ。奢ってやるよ」

彼女の言う必勝の作戦を聞いた俺は、一応納得して、彼女の後に着いていった。

ここは?

彼女に案内してもらった所は大衆居酒屋だった。

『居酒屋バッカス』と書いてある

そういえば、今気づいたが異世界でも言葉が通じるし、文字や数字も馴染み深いものが使われている。もちろん単位や若干の違いがあるが、これは助かる。

「姉ちゃん、食い物をジャンジャン持ってきてよ。景気づけだ。兄さんもどんどん食べてくれ。」

多くの料理がテーブルに並ぶ。

「兄さん、そういえばまだお互い名前も聞いてなかったな。私はアリス、アリス・イングラットだ。まぁアリスって気軽に呼んでくれてもかまわないよ」

俺の名前は田中恭介だ。

「タ・ナ・カ・キョ・ウ・ス・ケ。変わった名前だな。タナカって呼んでいいか?」

いや・・・できればキョウスケで頼む。

「じゃあ、キョウスケ、勝利を祝って乾杯だ。」

アリスはコップを前に突き出す。俺もそれに習う

しかし、先ほどの作戦を聞いたが、そこまで上手くいくものだろうか?

俺が怪訝な顔をしていると、アリスが

「なんだい兄さん、辛気臭い顔をして…そんなんじゃ勝利の女神は微笑まないぜ。さぁ大勝負の前にはこの締めを平らげれば完璧だ。」

見ると、油で揚げた丸鳥がテーブルの上に鎮座している。

「これは、この国の名物で鳥のブリング揚げっていうんだ。勝負の前のゲン担ぎにもってこいだ。」

なるほど、前の世界でのかつ丼みたいなものか

「さすがに食べきれなかったら、持ち帰っても良いんだぜ」

そうさせてもらおう…俺はアリスから預かった銀貨で支払いを済ませてバッカスを後にした。

「さぁここから本番だ。キョウスケ気合いれていけよ!」

ここがこの異世界に転位して最初の博打を打つ場所

『博打処、ヘブンズドア』

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