戦争と科学
3154年3月18日。重厚な灰色の雲が、国会の上空を覆っていた。
世界はすでに戦争のただ中にあった。首都までには影響を及ぼしていないが、既に何万人もの人が出兵していた。
国連会議場には、代表者たちが揃っていた。冷ややかな空調の中、無数のホログラム・スクリーンが浮かび上がり、衛星映像や戦況データを映し出している。
「――今回の戦争は、レフリオンをいかに制御し、利用できるかにかかっている。」
重厚な声が響く。老練な議長の言葉に、会場の空気がわずかに震えた。
「この夢のような技術を使いこなした国が、次の世紀を制するだろう。」
「軍関係者にはすでに指示を出してあります。」
冷静な女性の声が返る。
「各国の研究機関でも応用が進行中です。科学者たちは日夜、レフリオンの安定化を模索しています。」
その名が出ると、ざわめきが走った。
「――陽菜博士。」
誰かがその名を口にした瞬間、空気が一瞬だけ張り詰めた。
「彼女の開発する武器が、戦況を左右するのではないか?」
「そうでしょう。」
別の代表が応じる。
「彼女の作るものは、単なる兵器ではない。これまでの常識を覆すようなそんな武器だ。」
「Project:Azureの進捗は?」
議長が低く問う。
「順調とのことです。」
報告官が即答した。
「完成まで、あと一カ月もかからないと。研究所からの言葉です。」
やがて議長が椅子にもたれ、深く息を吐いた。
「……世界はまた、選ばされるのだな。希望か、滅びか。」
会議室の外では、重装備の警備兵が無言で立ち並ぶ。都市の夜空には、青白い輝きが瞬いていた。それは、レフリオンのような淡く冷たい明かりだった…
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