春先病院
3154年2月26日。私は目を覚ました。しかし、視界に映っているのは見慣れない天井と、何かの器具だけだった。いや、正確にはこれは左目の世界だ。右目とはまったく違う世界があった。そのあと医者がやってきた。
「気分はどうですか?あなたは本当にぎりぎりの状況で運ばれてきたんですよ。生と死の淵を綱渡りしているかのような容態でした。今は安定していますが…何か心当たりはございませんか?あと、あなたのその手についても説明が欲しいのですが。」
そう言われて右手を見てみる。手の血管が蒼く変色していた。そこからは淡い光が放たれている。体調は良いとは言えないが、だいぶましになっていた。
「心当たりで言うとレフリオンですかね。ここ最近ずっとレフリオンで発電機の改良をしてましたから。それ以外は特にありません。手についてもよく分かっていなくって。」
医者は驚いた顔をしてすぐに話始める。
「最近の実験で分かったことがありまして。レフリオンは、放射能のような毒性がありまして。それが発生するのは、修理や復元など等価交換を行っている場で発生しています。なので、被爆なさったのではないですか?」
そう言い何処かに電話を掛け始めた。
「晴香博士。そちらの病院に患者を一人搬送したくって。ええ。レフリオンの被爆を受けた患者です。分かりました。ありがとうございます。」
「今からあなたは、春先病院に搬送されることになりました。そこで治療を受けれると思います。うちのような病院よりはいいかと。」
――春先病院
最先端の医学が集まった病院だ。すべての病気に対しての最新的な治療を行える。そこのセンター長は、晴香博士だ。医学の権威である博士は、様々な功績を残している。様々な分野の治療法。そして医薬品の数々を発明してきた博士は、今でも研究を続けているらしい。
それから間もなくして、私は春先病院に搬送された。それからはいろいろな検査をされた。血液検査や、視力などありとあらゆる項目を検査された。結果は明日出るらしい。私は病室に戻り、ベットに寝転がる。レフリオンは確かに夢のような物質だった。私にとっても世界にとっても。しかし蓋を開ければ、このようなことになってしまった。私はいつまで生きていけるのだろうか?その日はあまり寝れなかった。
「寝てしまったらもう目が覚めないかも。」
そう思ってしまう。それくらい自分でも今の状況が酷いことを理解している。いつ命を落とすか分からない。そんな影が付きまとう。落ちてしまえば待っているのは「死」。レフリオンは徐々に私の体を蝕んでいっているのではないか。そんな不安が付きまとう。そして私は眠りについた。
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