医学の選択肢
3154年2月10日。晴香博士は、研究を続けていた。医学の選択肢を、新たな道を。良い実験結果は得られず、時間だけが過ぎていった。更に、東二博士が発見した副作用が後押しし、進捗は停滞していた。一か月限り、そういう言葉が脳裏によぎる。
「一か月に限り驚異的な再生能力と身体能力の向上が望める。」
その言葉を思いだす。そう、一か月で命を落とすのだ。この現実が、レフリオン関係の実験が止まっていた原因だった。しかし思い返してみる。一か月は死ねない。そう言っていた。その間は息をするように再生すると…
「まさか、この一か月と言うのは悪い意味だけではなかった。どんな状態であっても一か月は生きれる。そういう意味にもなるんだ。」
私はそう気づいた。レフリオンが成すのは一か月の驚異的再生と身体能力の強化。それが意味するのは、
――医学の最後の砦
そんな言葉がふさわしいと感じた。一か月と言うのは短いようにも思える。しかし、余命がわずかな人にとっては希望の光であるだろう。一か月と言う短期間。それでも、望む人は要る。私の恩師の人が言っていた言葉を思い出す。
「命は短くとも、燃え盛る瞬間に価値がある。」
そう言っていた。残りが少なくともその人にとって価値のある瞬間だと…
「一か月でもその人にとっては大事な一か月なのではないか?最後の瞬間まで元気でいられるのなら。私は人の命を扱う医者でもあるんだ。患者の希望に沿って治療を行う。その中の選択肢の一つであるだけだ。選んだって、選ばなくったって。一度きりのその人の人生だ。選択肢なんだ。人生の最後の瞬間どうするかの…」
実証実験を繰り返し、最終的に医学の最後の砦として、一つの治療法として確立されたのだった。この治療には奇跡と悲しみが混在していた。
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