過去を語る時
3153年12月20日。今は経過観察中だ。今、ガラス越しで見える実験室内では雨が降り注いでいる。実験開始日である3154年12月11日、あれから9日が経った。今の天気は9日前の天気を鏡写しにしているようだ。当時の状況、降水量がそのまま再現されている。私は、実験室の環境が分かる、計器類を確認しに行った。そこでは今も止まることなくデータが刻まれて行っている。針は止まることなく動き続け、紙には、気圧の変化が事細かに書かれて行っている。それと同時に当時の状況と照らし合わせている。照合結果を私は確認した。そこには驚きのデータが書かれていた。
――天気の合致率99.998%
そう書かれていた。私は目を疑った。そして記録端末を起動し中を確認する。そこには一つのグラフと詳細な結果があった。グラフの線はそれをコピーしたかのようにぴったりと重なっていた。詳細な結果を確認する。
「3153年12月17日。」
「天気・雨」
「降水量1.85㎜」
「980hPa」
「風向き・南西2m/s」
「3153年12月05日」
「天気・雨」
「降水量1.9㎜」
「980hPa」
「風向き・南西2.1m/s」
ほとんど合致している。いや、正確に再現されている。この誤差は、許容範囲内だ。この程度の誤差なら。台風などの強さを可視化できる。その後の空気さえあればそこからの情報で判別できるのだ。
「実験は成功している。順調だ。この調子でいけば、6日後には…この実験が成功すれば、気象学を大きく揺るがすだろう。そして進化するんだ。レフリオンは過去を見据えてるのではない。天気が、気象が語り掛けてくれる過去を伝えているだけだ。」
私は実験室を後にする。あそこでは今でも雨が降り風が吹き荒れている。当時を再現するかのように。
――天気は予測するものではない、予知するものだ。
私は尊敬する博士の言葉を思い出した。
「私がその予知者になる。確実な天気の…」
そう言う博士の背後は、どこか寂しさで満ちていた。
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