実験5・動き出す歯車

理奈博士の研究記録

 3153年12月18日。


 これまでに私が発見できたデータをまとめておく。


 「この物質レフリオンは、他の分野からの研究で上がっている通り物を復元できる。復元しようとするときに邪魔な熱は空気中に放電される。その放電作用こそが、冷却の秘密、そして追加で発電できる理由だ。」


 私はここまで書き万年筆を持つ手を止める。それは頭痛によるものだった。ここ最近、ずっと頭が痛い。


 「偏頭痛がぶり返ったのかな?」


 そう思っているが、結果はよく分からない。そもそも片頭痛自体が断定できないからだ。頭痛薬を手に取り服用する。痛みが完全に引くわけではないが少し良くなった。そして再び万年筆を手に取る。万年筆は既に使い古されていた。この万年筆を見て、


 「父さんたちのためにも私はこれからも研究を続ける。そして父さんの努力を無駄にしないんだ。」


 そう言った。そして、報告書を書く


 「確かにこれらは分かったけれど、結局分からないことばかりだ。一番おかしいのは、代償が無いことだ。旧時代の原子力発電は、高出力でクリーンだが冷却問題と使用済み燃料の処理が大変だった。なのにこの物質は、復元できるのに代償が無い。私はそこについて詳しく研究していこうと思う。」


 ここまで書き書く手を止める。今のところ書けるのはここまでだったからだ。私は最後にサインをし論文のコピーを茶封筒に詰める。そして、研究所を後にする。日が暮れ始めた夕方の空のもとには光り輝くビル群が連なっていた。車のエンジンをかけ車を運転する、道路は街の方へと一直線に延びていた。

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