天文学の道

 3153年12月16日。私は、天文学と宇宙物理学の理解を深めようと、今日も望遠鏡を覗いた。静寂を貫くは無と有が共存していた。


 ――ボイド、ダークエネルギー


 それらが宇宙を作っている。そして、無だ。その中に存在する星々と、それを構成する銀河が、輝きが有となって浮かんでいる。浮かんでいるのか置かれているのか、その真実は今も分からない。しかし、解明の足掛かりになるであろう物質が、見つかったのだ。


 ――その名は『レフリオン』


 今、全分野で注目が集まっている。もう進化しない、進化できないそう思われた分野の数々が息を吹き返していっている。


 天文学・宇宙物理学もその中の一つだ。私が研究していった、分野であるこの分野も限界点が近づいていた。生命の限界。そして、結果が来るまで何十年と待たなければいけなかった。そんなこの分野に光の手が差し伸べられたかのようだった。この物質には多大な可能性が眠っている。修復能力によって、軽量化が可能だ。修理の必要もない。デブリに突っ込んだって自己修復できるんだ。


 安全性も格段に上がる。そして、それらを発展させれば惑星や衛星の軌道予測がより正確なものになるだろう。私は目の前にそびえたっている天文台に入る。


 「天照博士。既に観測の準備が、出来ております。」


 この天文台には世界最高峰の望遠レンズが使われている。世界で一番遠くが見渡せる天体望遠鏡だ。これが進化すれば、どう変わるのだろうか?


 ――宇宙に目がある


 そう錯覚してしまうほどこの望遠鏡は正確に、遠くを映し出せるのだ。既にセットアップは完了しているらしい。


 今日も新たな可能性を探す旅に出よう――。


 ゆっくりと、ドームが開いていく。厚い雲のように覆っていた天文台の天蓋が、金属の低い音を響かせながら割れていく。そのはざまから見える宇宙は無限に果てしなく広がっていた。


 宇宙物理学・天文学にはまだレフリオンを使えない。実証結果。ほかの分野で好成績を収めないと使用許可は下りない。それはこの分野が宇宙に影響を与えてしまうからである。だから今はいつもどうりに観測をするのだ。いつの日か、レフリオンによって開かれる道を増やすために…

 

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