戦闘への道
3153年12月13日。俺はレフリオンで戦闘分野に応用できる回復効果を研究していた。
「東二博士。実験準備が整いました。いつでも実験を開始できます。」
今回の対象は、医学の権威、晴香博士から譲り受けたips細胞。こちらで意図的に傷を与えてある。さあ、どれほどの回復力を見せるか。
「実験開始。結果が出次第報告してくれ。些細な変化でも記録するんだ。その一つが未来を変えるかもしれない。」
実験者がレフリオンをかけると、細胞の表面に粒子が舞い降りるように着地した。瞬間、粒子は青白く発光し、傷の周囲に広がる。
粒子たちはスキャンするかのように細胞の周りをまわっている。そして粒子一つ一つが微小なナノスキャナーのように振動し、損傷した細胞のDNAや細胞膜を正確に読み取っていくように思えた。そして、壊れた構造を再構築するために、周囲から分子を呼び寄せ、必要なタンパク質や脂質を自ら合成する。実験エリア内に置かれていた細胞が消えていた。レフリオンによって分解されたのだ。
傷口の縁から微細な光の糸が伸び、裂け目を慎重に縫い合わせる。内部の壊れた網目構造は、粒子が糸のように絡まり合いながら徐々に再形成される。触れるとまだ柔らかいが、わずか数秒で弾力を帯び、周囲の健康な細胞と同じ硬さと弾性を持つようになる。
さらに、粒子は損傷箇所にテンプレートを作り、欠損した細胞の機能情報を補完する。まるで目に見えない設計図を埋め込むかのように、電子信号が細胞内に流れ、再生を誘導する。傷跡は滑らかになり、光は次第に青白さを失い、周囲の健康な細胞と全く同じ色・形・性質へと変わった。そして、光が弱まっていった。
実験テーブルの上に残されたのは2つの細胞だった。一つはダメージを与えた物。もう一つは設計図として利用された、回収を忘れた細胞だった。
「…やはり、レフリオンは有機物の修復も可能だった。無機物だけでなく、生命そのものの再生も制御できる。」
「大発見だ。戦闘などにも発展させれるんだ。」
「経過観察をしよう。副反応がないか。そうだな一か月後にしよう年明けの後だな。いったんそれまでは各自研究を続けるように。」
保管室に置かれた細胞の一部は、薄い灰色だった表面が徐々に深い青色へと変わり、内部の微細構造まで透けるように見えていた。まるで静かに光を宿すかのように、青い光沢が細胞の輪郭を不自然に際立たせ、普段の観察ではありえない微細な動きが内部で蠢いているのが確認できた。
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