医学の道
3153年12月9日。
「ニュースです。医学の権威である晴香博士が、先日新たな治療法を確立しました。従来の方法に比べ、成功率が格段に上がったとのことです。そして、術後の生存率も高い治療法だそうです…」
自分がニュースに出ていた。世間は世紀の大発見だ。そう言ってくるがそうは思わない。あくまで私は患者を助けたいのだ。名誉が欲しいわけではない。
私はレフリオンの研究に勤しんでいた。医学の発展、特に人命を救う可能性に心を奪われていたのだ。もしレフリオンの復元の力を医学に応用できれば、何万人もの命を救えるだろう。死の淵から人々を生還させられるかもしれない。
実験台に静かにシャーレを置く。その中で、小さな生命の可能性が揺らめいている。iPS細胞だ。かつてはただの皮膚や血液の細胞に過ぎなかったものが、遺伝子の導きによって無限の可能性を手に入れた。心臓にも、神経にも、肝臓にも姿を変えられる未来の細胞である。これらは病の謎を解き、新たな薬を生み、失われた組織や臓器を再生する希望を育む。胚を使わずに得られるその力は、医学の世界に新たな光を差し込む。静かなシャーレの中に、生命の無限の可能性が眠っているのだ。
これまでこの細胞は数々の課題を乗り越えてきた。ならば、レフリオンも解明できるのではないか…
私はそう考えた。
シャーレにレフリオンを滴下する。しばらく何も起こらなかったが、青白く微かに光るレフリオンが、ゆっくりと反応し始めた。私は経過を観察することにした。容器は体温に近い温度に保たれ、静かな光の中で、細胞とレフリオンが見えない何かを語り合っているようだった。
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